雇用保険に12ヶ月以上加入していた人は、離職時に失業手当が受け取れる可能性があります。
①31日間以上働く見込みがある者、②1週間の所定労働時間が20時間以上の者、③学生ではない者は雇用保険に入ることになっています。
パートやアルバイト、派遣社員の方でも雇用保険に入っている人が多いと思います。加入義務があるのは事業主です。本人が加入手続きするわけではありません。
失業手当や失業給付と呼ばれているものは、正しくは雇用保険の基本手当のことです。雇用保険の基本手当(失業等給付)と言われることもありますが、全て同じものを指す言葉です。
このページでは、失業保険のもらい方や条件、求職活動のやり方などについて解説します。
失業保険の手続きはハローワーク
失業保険の手続きはハローワークで行います。
ハローワークは正式には公共職業安定所と言い、国(厚生労働省)の機関で、職業紹介、雇用保険、雇用対策などの業務を行っています。
ハローワークは仕事を探している人が利用するイメージがあるかもしれませんが、仕事を辞めたとき(雇用保険の失業給付を受けるとき)にも利用します。
どこのハローワーク?
ハローワークは管轄区域が決まっているので、住まいを管轄しているハローワークで手続きしましょう。ハローワークは全国各地にあります。
初めてハローワークを利用するときは、どこのハローワークへ行けばいいのかわからないと思います。
住んでいる市区町村にハローワークがない場合もあると思います。
ハローワーク | 管轄 |
---|---|
ハローワーク飯田橋 | 千代田区、中央区、文京区、大島町、八丈町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村 |
小笠原総合事務所 | 小笠原村 |
ハローワーク上野 | 台東区 |
ハローワーク品川 | 港区、品川区 |
ハローワーク渋谷 | 渋谷区、世田谷区、目黒区 |
ハローワーク新宿 | 新宿区、中野区、杉並区 |
このように、各ハローワークごとに管轄区域が決まっています。
どこのハローワークかわからない方は、ネットで検索するか、厚生労働省ホームページの「都道府県労働局所在地一覧」より管轄一覧表を調べてみましょう。
ハローワークの営業時間(開庁時間)
ハローワークの開庁時間は平日8:30~17:15まで。土日・祝日は休みです。
ハローワークは公共の施設なので、基本的に平日のみの開庁となっています。
一部のハローワークでは、平日19:00まで、土曜日10:00~17:00まで開庁しているところや、電話による職業相談のみ対応としているところもあります。
ハローワークによって開庁時間が異なるので、利用の際には検索または問い合わせてみましょう。
雇用保険の受給手続きは、待ち時間を除いて約1時間かかります。混雑時にはもっとかかりますので、時間に余裕を持って行くことをおすすめします。
受給手続きに必要な書類
- 雇用保険被保険者離職票1、2
- マイナンバーカードまたは確認書類
- 最近の写真2枚(正面上半身、縦3cm✕横2.5cm)
- 通帳またはキャッシュカード
- 船員だった方は船員保険失業保険証および船員手帳
失業保険の受給手続きには、雇用保険被保険者離職票が必要です。
離職票は事業主がハローワークに届け出て発行してもらうものです。辞めた会社から離職票を受け取ったら手続きしましょう。
以前は手続きに印鑑が必要でしたが、現在は不要となりました。
申請期限は離職日の翌日から1年以内
雇用保険を受給できる期間は、離職日(会社を辞めた日)の翌日から原則1年間です。
雇用保険を受給する方の多くは、失業してからすぐに手続きに行くと思いますが、入院や体調などの理由ですぐに申請手続きできない場合もあります。
雇用保険の受給期間は、離職日の翌日から1年です。期限を過ぎてしまうと、給付日数が残っていても支給されなくなってしまいます。
病気や怪我、妊娠、出産などの理由で働くことができない状態が30日以上続いた場合は、「受給期間延長」の手続きをして受給期間を伸ばすこともできます。受給期間は最長4年以内まで延長することが可能です。
雇用保険は手続きしないと受給できません。失業給付を早く受けたい方は、退職後に離職票を受け取ったら速やかに手続きしましょう。
失業保険の給付金を受け取る条件
雇用保険の基本手当(失業給付)を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。
- 離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上
- 倒産・解雇、やむを得ない理由で失業した場合は離職前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上
雇用保険は基本的に12ヶ月以上加入していた被保険者が、基本手当を受給できます。
会社の倒産や解雇、その他やむを得ない理由で急に失業となった場合には、加入期間が6ヶ月以上となっています。
また、雇用保険は働く意思があり就職活動をしている方に支給されるものですので、次の条件を全て満たす必要があります。
※厚生労働省
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
- 積極的に仕事を探しているにも関わらず現在職業についていないこと
次の仕事が決まっている方や、就職が内定している方は対象外です。以下のような方も受給できません。
- 妊娠・出産・育児・病気・怪我ですぐに就職できない方、就職するつもりがない方
- 家事に専念する方
- 学業に専念する方
- 定年で退職してしばらくゆっくりしようと思っている方
- 自営業を始める方
- 次の就職先が決まっている方
- 会社役員に就任している方
- パートやアルバイトをしている方
雇用保険の基本手当は、積極的に仕事を探している状態でないと支給されません。
積極的に仕事を探すことを「求職活動」と言います。失業給付を受けるには「求職活動実績」が必要です。(求職活動については後ほど詳しくご説明します。)
※失業保険受給中に、パートやアルバイトをした場合、1日4時間未満、週20時間未満、ハローワークに申告するなどの要件を満たせば、基本手当を受給することは可能です。
失業保険の求職活動とは
失業保険を受給するには「求職活動実績」が必要です。求職活動とは、求人への応募や面接、ハローワークで職業相談することなどを言います。
- 失業保険の受給は求職活動が必要
- 求職活動とは面接・採用試験・職業相談・セミナー等の受講など
- 認定日までに2回以上の求職活動
※初回認定日までは1回以上
雇用保険の基本手当は、失業中で仕事を探している方に支給されるものです。従って、受給するには求職活動をしていることが条件になっています。
求職活動は失業の認定日までに、原則2回以上必要です。初回認定日までは1回以上としています。
求職活動として認められるもの
求職活動として認められるものは以下の通りです。
- 求人への応募・面接
- ハローワークで職業相談・職業紹介
- 民間機関が行う職業相談・職業紹介(許可・届出のある機関)
- 公的機関による講習・セミナー
- 個別相談ができる企業説明会の受講など
- 再就職に資する国家試験、資格試験の受験など
雇用保険の失業給付を受けるには、積極的に求職活動を行う必要があります。
企業の説明会などは、個別相談ができる場合に求職活動としてカウントされます。
認められないもの
求職活動として認められないものは以下の通りです。
- ハローワークで求人情報閲覧
- 新聞・広告・ネット等で求人情報閲覧
- 知人への紹介依頼
- 職業紹介機関への登録(転職サイトや転職エージェント等)
昔はハローワークのパソコンで求人検索しただけで、求職活動をしたことのハンコを貰えましたが、現在は求人閲覧だけでは求職活動として認めてもらえません。
また、リクルート、リクナビ、マイナビ、dodaなどの転職サイトや転職エージェントを利用する場合でも、登録しただけでは求職活動にならないので注意しましょう。(登録後、求人に応募や面接した場合は、求職活動として認められます。)
求職活動をするとハンコを貰える
求職活動をした際には、その証明としてハンコを貰えます。
- ハローワークでの求職活動はハンコが貰える
- ハローワークのセミナー等の受講は受講証明書が貰える
- ハローワーク以外の求職活動は失業認定申告書に記入する
ハローワークで職業相談をした場合や、ハローワーク主催のセミナーを受講した場合には、その場でハンコが貰えたり受講証明書が貰えます。
ちなみに、上の画像は求人閲覧だけでハンコが貰えた時代のものです。
ハローワークによって丸い判子や、相談・セミナー等が印字されていることもありますが、基本的には活動をした日付や内容の判を押してくれます。
ハローワーク以外で求職活動をした場合には、失業認定申告書に活動の内容を記入して申告します。(受講証明書や参加証明書など証明できるものが貰える場合には、認定日に持参することをおすすめします。)
求職活動実績の嘘がバレたら?
求職活動実績で嘘をつくことは、失業給付の不正受給に該当する可能性があります。
Q.失業等給付を不正に受けた場合、どのような処分がなされるのですか。
A.いずれかの失業等給付について、偽りその他不正の行為により受給する、又は受給しようとした者に対しては、不正の日以後すべての失業等給付の支給が停止され、不正受給による失業等給付について、受け取った額を返還することとなります。
また、悪質な不正受給者に対しては、不正に受給した額を返還させるだけでなく、返還額の2倍に相当する額の納付が命ぜられることとなり、場合によっては詐欺罪として刑罰に処されることがあります。
※ハローワーク
不正を行った者に対しては、支給停止や給付金の返還が求められます。
悪質な不正受給者に対しては、給付額の3倍(給付額+返還額の2倍)の罰金が課せられたり、詐欺罪で刑事告発される可能性があります。
不正受給について
嘘偽りを申告したり、働いたことを申告しないなどで、不正に基本手当を受けようとした場合には不正受給となります。不正受給すると厳しい処分を受けます。
不正受給した方は、雇用保険法及び刑法の規定で、不正に受給した金額の3倍の金額を納めなければなりません。
- 不正行為があった日以降は支給停止
- 全額返還命令
- 3倍返しの納付命令
正しい申告をせずに不正受給した場合には、受給した金額を3倍返しで納付する必要があります。
- 求職活動実績に偽りを申告した
- 実際に応募していないのに求職活動に応募や面接などを記載した
- セミナーを受講していないのに求職活動に記載した
- パート・アルバイト・派遣就業・日雇いなどをしたのに申告しない
- 内職や手伝いをして収入があったことを申告しない
- 自営業を初めたのに申告しない
- 休業補償給付や傷病手当金の支給を受けているのに届出ない
上記のような場合は不正受給となります。失業認定申告書は嘘偽りなく事実を記載して申告しましょう。
求職活動実績作りのポイント
すぐにでも職を探したい・就きたいという方にとって求職活動は簡単なことですが、「とりあえず失業保険を貰おう」「貰えるものは貰ってから仕事を探そう」「少しのんびりしながら職を探そう」という方もいると思います。
雇用保険を受給するために、求職活動実績作りをしている人は多いです。
過去にハローワークに通ったことがある私の体験から、求職活動実績の作り方についてポイントをまとめてみました。
- 雇用保険説明会が求職活動1回にカウント
- 認定日の窓口相談で求職活動1回にカウント
- ハローワークは簡単な相談で1回にカウント
- 職業相談は応募や面接までいかなくても1回にカウント
- ハローワークで求人閲覧後に窓口で相談すると1回にカウント
- 講習やセミナーは参加するだけで1回にカウント
- 簡単な講習やセミナーはすぐに予約が埋まる
求職活動をどうしようかと初回から悩むかもしれませんが、「雇用保険説明会」に出席すると求職活動としてカウントされます。初回認定日はこれでOKです。
認定日や求人閲覧のためにハローワークへ行った際には、窓口で相談しましょう。
相談の内容は「どんな仕事が向いているか?」「この求人の仕事内容はどんなものか?」「持ってる資格を活かせる求人はあるか?」など、簡単な相談でも職業相談として求職活動にカウントされます。
認定日に窓口で、職員の方からどんな仕事をしたいか、時間帯の希望など簡単な質問をされて、「これも求職活動として1回に入りますから。」と言われました。
窓口で相談することに構えていましたが、意外と簡単な相談でOKなんだと感じました。
ハローワークの講習やセミナー
ハローワーク主催の講習やセミナーもいくつか参加して、求職活動実績を作りました。
参考までに、ハローワーク掲載されているセミナーをご紹介します。
- 建設の仕事を知ろう入門セミナー
- 警備の仕事を知ろう入門セミナー
- タクシードライバー入門セミナー
- 警備の仕事を知ろうDVDセミナー
- 応募書類作成セミナー
- 就職準備セミナー
- 介護の仕事入門セミナー
- 保育の仕事入門セミナー
- 福祉の仕事入門講座
- わからない自分を知る自己分析術
- 新しい視点が増える求人の見方・探し方
- 知ると書きたくなる!応募書類のポイント
- 今すぐできる採用面接実践講座
- 知って得する労働法
- 印象力がUPする面接術
- オンラインスキルアップ講座
上記のようなセミナーが、各ハローワークで開催しています。内容は聞くだけのものから、実践や講師とやりとりのあるものもあります。
私は応募書類の書き方や自己PRなどのセミナーを受けたことがありますが、コロナ前だったこともあり、グループディスカッションで発表する場面がありました。
その場でグループが作られて、「仕事で達成感を味わったときはどんなとき?」を順番に発表し、質問し合う感じです。とても緊張して困りました…。
セミナーは受講人数が決まっていて予約制です。
ただ聞くだけでいい簡単なセミナーは、人気がありすぐに予約でいっぱいになります。案内が出たら早めの予約をおすすめします。
求職活動になるかわからない場合
ハローワーク主催のセミナーや講座は、求職活動になるかならないかがパンフレット等に書いてありますが、ハローワーク以外の場合にはそこまで詳しく書いてありません。
求職活動になるかならないかわからない場合は、事前にハローワークで相談することをおすすめします。
というのは、利用しているハローワーク毎に、求職活動として認める場合と認めない場合があるからです。
転職サイト等が開催している転職フェアや、転職イベントに参加した場合のハローワークの対応を例に挙げます。
- 参加しただけではダメ。参加して個別相談をすればOK。
- 参加証明書を貰えばOK。
- 参加した証明としてフェアのパンフレットや入場券を提出すればOK。
- 参加して企業に応募したらOK。
このように各ハローワークによって対応が異なるのが現状です。
求職活動として認める認めない事柄は大まかに決まっているものの、細かいことについては各ハローワークごとの判断に任せているようです。
求職活動は認定日までに2回以上必要ですので、「ネットに書いてあったからOK」と判断するのではなく、心配な場合は事前にハローワークで相談してから転職フェアへ行くことをおすすめします。
早期就職者は就職促進給付が受けられる
雇用保険を受給している方が早期に再就職した場合には、「就職促進給付」の手当が支給される制度があります。
就職促進給付は早期の再就職を促進するための制度です。簡単に言うと「基本手当を受給中でも早く就職が決まった場合には、基本手当でなく違う手当を出しますよ」という制度ですね。
就職促進給付には4つの種類があります。
- 再就職手当
- 就業促進定着手当
- 就業手当
- 常用就職支度手当
就職促進給付は雇用保険受給者なら誰でも受けられるわけではなく、一定の要件を満たした方が受けられる手当です。
失業保険を全額受給できるように求職活動実績作りに奮闘している方もいますが、就職促進給付で手当が支給されますし、再就職には失業のブランク期間が長くなると不利になってしまうこともあります。
雇用保険の受給を受けることだけに目を向けるのでなく、再就職に向けて活動することが大切です。
再就職手当
再就職手当は、雇用保険の受給が決まったあとに、早期に安定した職業に就いた方や事業を開始した方に支給されます。
- 7日間の待機期間満了後に就職した(事業を始めた)
- 基本手当の支給残日数が3分の1以上ある
- 1年を超えて勤務することが確実である
- 雇用保険の被保険者になっている
- 過去3年以内に再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていない
再就職手当は、早く再就職すると給付率が高くなります。
基本手当の支給残日数 | 給付率 |
---|---|
3分の2以上残して再就職 | 70% |
3分の1以上残して再就職 | 60% |
支給日数を3分の2以上残して再就職した場合は、基本手当の支給残日数の70%の額が再就職手当として支給されます。3分の1以上残して再就職した場合は、60%です。
就業促進定着手当
就業促進定着手当とは、再就職手当を受給した方が再就職先で6ヶ月以上雇用され、その6ヶ月間の賃金が離職前に比べて低下している場合に支給される手当です。
- 再就職手当を受給して6ヶ月間働き続けた方が対象
- 6ヶ月間の賃金が離職前よりも低い場合に支給
- 給付上限は基本手当の支給残日数の40%
就業促進定着手当の上限は支給残日数の40%ですが、再就職手当の給付率が70%の場合は30%となります。
就業手当
就業手当とは、基本手当受給中に再就職したものの、再就職手当の支給対象とならない形態で就業をした場合に支給される手当です。
- 再就職手当の対象外となる安定していない仕事に就いた時に支給
- 支給残日数が3分の1以上かつ45日以上
- 支給額は就業日✕30%✕基本手当日額
- 1日あたり支給額上限は1,887円(60歳以上65歳未満は1,525円)
雇用保険の基本手当受給中に、安定した職業に再就職した場合は「再就職手当」が支給されますが、安定してないパートやアルバイトなどの場合は再就職手当が支給されません。
そのような方に支給されるのが就業手当です。再就職先として、雇用保険の被保険者とならないようなパートやアルバイトに就いた方に支給されます。
常用就職支度手当
常用就職支度手当とは、基本手当の受給資格がある方で、45歳以上や障害があるなどの就職が困難な方が安定した職業に就いた場合に支給される手当です。
- 就職が困難な方の常用就職を促進させる手当
- 基本手当の支給残日数が3分の1未満の方が対象
- 1年以上雇用されることが見込まれる方が対象
- ハローワークによる紹介で就職した方が対象
常用就職支度手当は、基本的に就職が困難な方のための手当で、45歳以上の高年齢の方や障害のある方、出稼ぎしてた方や前科のある方などが対象です。
就職が困難な方の場合は、就職するまでに長期間かかることを考慮して、基本手当の支給残日数が3分の1未満でも手当が支給される制度となっています。(雇用保険受給中に早期に就職した場合は再就職手当が支給されます。)