生活保護を受ける上で、デメリットやしてはいけないことがいくつかあります。
保護費を受給中にやっていいことといけないことで判断に迷ったときは、福祉事務所やケースワーカーに相談してみてください。
生活保護は、生活に困窮した人が受けられる国の支給制度です。普通に働いて生活できる人は対象者ではありません。
デメリットがあるからといって生活保護の申請を諦める必要はありません。生活保護は、不正受給を防ぐために厳しい条件がありますが、必要な人が躊躇することなく利用できるものでなければなりません。
このページでは、生活保護受給者がしてはいけないこと、生活保護のデメリット、親が生活保護を受けたときのデメリットなどについて詳しく解説します。
生活保護受給者がしてはいけないこと
生活保護費を受給しているときに、してはいけないことがいくつかあります。
してはいけないことをした場合、保護費の返還を求められたり、生活保護の廃止になる可能性があります。
不正受給に該当すると逮捕される場合もあるので注意してください。
- 十分な収入があるのに受給を続ける
- 必要以上の貯金をする
- 資産となるような高価なものを所有する
- 返戻金の多い貯蓄型保険に加入する
- 各種ローン(住宅ローン・自動車ローン・カードローンなど)の利用
- ケースワーカーの指導に従わない
収入がある場合は申告する
生活保護を受けつつ収入を得ることは可能ですが、収入分の保護費は返還しなければなりません。最低生活費を超える収入がある場合は、保護は打ち切られます。
収入申告義務
生活保護受給中は、未成年者・世帯分離の人を含めたすべての収入について世帯員全員の収入申告を行う義務があります。
※千葉県習志野市
生活保護を受けている世帯で収入を得たときは、必ず申告するようにしてください。労働収入はもちろんですが、不動産収入などの働かずに得た収入も申告が必要です。
収入申告せずに生活保護を受けると逮捕される場合もあります。
アルバイト収入申告せず、生活保護費414万円だまし取る 容疑の無職男逮捕
生活保護費を不正受給したとして、京都府警伏見署は19日、詐欺の疑いで、高知市の無職の男(49)を逮捕した。
逮捕容疑は2016年12月~19年12月、建設業のアルバイト収入を申告せず、京都市伏見福祉事務所から38回にわたり、生活保護費414万円をだまし取った疑い。
伏見署によると、今年3月に同事務所から「働いていたようだ」と告発があり、アルバイト先の給与記録などから不正を裏付けた。受給当時は伏見区在住だったという。
※京都新聞
不正受給は違法なので、収入のある人は必ず申告してください。
貯金や資産性のある物の所有は要注意
貯金するほど余裕があるなら生活保護費を減らさなければなりません。しかし、10万円程度の貯金なら認められることが多いです。
売却すればまとまった金額になる物は所有できません。マイホーム、車、バイク、宝石、ブランドバッグなど資産性のあるものを所有できないと憶えておきましょう。
資産性のあるものは、自分で購入せずに人から貰った物も対象になるので注意が必要です。原則として自分名義や同一世帯人名義の車の所有は認められません。
貯蓄性の高い生命保険は加入が認められませんが、生活保護費の10%程度の金額で加入できる掛け捨て型の保険は認められる可能性があります。
生活保護費をローンの返済に充てることはできないので、各種ローンの利用やカードローンなどは加入できません。
上記は、原則としてしてはいけないことなので、一定の条件を満たすと認められる場合もあります。
住んでいる地域によっても認められる範囲が変わるので、詳しくは福祉事務所に相談してみてください。
生活保護を受けるデメリット
高齢者が生活保護を受ける場合はデメリットにならないことも多いですが、現役世代の家庭が保護を受ける場合、これからの生活を考えるとデメリットも少なくありません。
生活に困窮する人が仕方なく生活保護を受けるのは当然ですが、働ける人が生活保護を受けてもよいことはありません。
働かない方が得と考える人もいますが、本当にそれで得しているのでしょうか?
生活保護利用者の大半が高齢者ですが、30代や40代で生活保護を受けようとする人はデメリットについてもよく考えておきましょう。
- 保護費が受け取れる
- 所得税や住民税が免除される
- 国民健康保険料の支払いが免除される
- 国民年金保険料の支払いが免除される
- 医療費が無料になる
- NHK受信料が免除される
- 保育料が免除される
預貯金に関する制限
生活保護者の貯金が禁止されているわけではありませんが、地域によって貯金の上限が決められている事が多いです。
一般的に10万円以上、または最低生活費の2分の1までの貯金しか認められません。
保護開始月の保護の程度の決定にあたって、手持金の額が最低生活費の5割を超える場合には、当該5割を超えた額を手持金として収入認定。
※厚生労働省
一定額以上の預貯金は収入と判断され、保護費から収入分が差し引かれます。最低生活費を超える貯金がある場合は、保護が停止される可能性があります。
資産性のある物の所有
貴金属や高級バッグ、高級時計などのすぐに換金できる資産性のあるものを所有することはできません。既に持っている場合は、売却しなければなりません。
株券、国債証券、投資信託などの有価証券も保有が認められていません。未公開株券等のすぐに売却することが難しい証券については、条件付きで所有が認められます。
バレなければ持っていても平気だと思うかもしれませんが、バレた時点で生活保護費の支給が打ち切られる可能性があります。
どこからどこまでが資産に当たるかは、自治体や担当者の判断になる部分もありますが、パソコンは資産ではなく生活必需品になりつつあります。
マイホームの所有
持ち家については、条件付きで所有が認められています。
不動産については、原則として売却することが求められますが、居住用の家については所有が認められます。
- 持ち家を失うと住む場所がなくなる
- 売却価値が高くない
住んでいない家や、売却価格が利用価値に対して著しく大きい場合などは、売却しなければいけません。
持ち家を売って何千万円という現金が手に入るなら、家を売って賃貸に引っ越せば生活保護を受ける必要はないはずです。
家を手放したくないから生活保護を受けるというのは認められませんが、そのまま家を所有する方が合理的な場合は継続所有が認められます。
賃貸住宅に住む場合、住宅扶助が出ますが、家賃の上限が決まっている為、好きな場所に住むことはできません。
車の所有
車の所有は原則として認められませんが、通勤や通院などに必要な場合は認められます。
Q.自動車を持っていても、生活保護を受給できますか。
A.自動車は資産となりますので、原則として処分していただき、生活の維持のために活用していただくことになります。
ただし、障害をお持ちの方の通勤、通院等に必要な場合等には自動車の保有を認められることがあります。お住まいの福祉事務所にご相談ください。
※厚生労働省
公共交通機関の利用が難しいなどの理由で、自家用車を所有しないと生活できない状況にある人は、事前に相談してみてください。
- 障害者の通勤用
- 障害者・障害児の通院用、通所用
- 事業用
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域の通勤用
- 深夜通勤などの通勤用
- 保育所等の送迎の通勤用
- 自動車の処分価値が小さい場合
上記に該当すれば必ず自動車の所有が認められるわけではなく、事業の内容、地理的条件、公共交通機関が本当に使えないのかなど個々の状況を審査した上で判断します。
障害者の通勤用、通所用として車の保有が認められるケースはありますが、通勤用や通院用、自動車の処分価値が少額といっても認められないケースが多いです。
生活保護費は国民の税金で賄われていますので、どうしても自動車がないとどうにもならない状況なのか、他の交通機関の利用ではだめなのか、自動車維持費等を考えると贅沢品として考えられます。
通院のために車で1~2時間かかったとしても、通院先の変更や他の交通機関での通院を進められます。どんなに田舎に住んでいても、自動車の保有はなかなか認められません。
ローンや借金の制限
保護費でローンを返済したり借金を返済することは認められていません。カードローンやキャッシングは収入とみなされます。
Q.住宅ローンがありますが、生活保護を受給することはできますか?
A.住宅ローンがあるために保護を受給できないことはありません。
ただし、保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保障する生活保護制度の趣旨からは、原則として認められません。
※厚生労働省
実際には生活保護者でもローンが組める場合もありますが、バレた場合はローン商品の売却や保護の停止になります。
住宅ローンは、「ローン残高300万円以下」「完済予定が5年以内」などの条件を満たしていると継続が認められる可能性があります。
クレジットカードの所有
クレジットカードを作ることは禁止されていないので、福祉事務所に相談すれば所有目的によっては認められます。
便利だから持ちたいといった理由で所有が認められることはありません。
認められた場合でも、カードは一括払いが基本で、リボ払いや分割払いはローンと同様に禁止される可能性が高いです。
実際には、生活保護受給者がカード審査に通るのは難しいですが、在籍確認のないカード会社で、信用情報機関に異動情報がない人は審査に通ることもあります。
積立型の生命保険の加入
終身保険、年金保険、学資保険などの貯蓄性の高い保険の加入は認められないことが多いです。
保険の解約返戻金は、資産として活用させるのが原則。
ただし、 (1) 返戻金が少額(最低生活費の概ね3ヶ月程度以下が目安)
※厚生労働省
(2) 保険料額が当該地域の一般世帯との均衡を失しない(最低生活費の概ね1割程度以下が目安)
場合には、保護適用後保険金又は解約返戻金を受領した時点で生活保護法第63条を適用することを条件に、解約させないで保護を適用して差し支えないこととしている。
保険の解約返戻金が最低生活費の3ヶ月以内、保険料が最低生活費の1割以下が目安になります。
学資保険については、解約返戻金が50万円以下である場合は加入することができます。
親族への扶養照会
生活保護を申請する際に、原則3親等以内の親族が援助できないか扶養照会を実施します。
生活保護の受給条件に「頼れる親族がいないこと」という項目があるためです。
しかし、一定の条件を満たすと扶養照会を回避することができます。
生活保護の扶養照会については、色々と問題があり2021年3月30日に運用の変更がありました。
- 親族自身が生活保護世帯の場合
- 扶養義務者が70歳以上の高齢者の場合
- 長期入院患者、施設入所者の場合
- 専業主婦(主夫)の場合
- 未成年者の場合
- 長期間連絡が途絶えている場合(10年以上音信不通など)
- 相続をめぐり対立している場合
- 縁が切られている場合
- DV加害者である場合
「扶養照会で親族に生活保護を受けることを知られてしまった」「親族に知られたくないから生活保護の申請をためらう人がいる」「扶養照会は拒否したのに福祉事務所は照会を強行」等など、問題がありながらも扶養照会を行い、援助につながるケースはほとんどないそうです。
全国74自治体の調査では、扶養照会をして実際に親族から援助が行われたケースは全体の1%未満です。
生活保護の扶養照会、仕送りは0.7%
74市区では、両年度に開始が決まった計20万6513世帯について、親族のべ22万7984人に扶養照会をしていた。
その結果、仕送りをした親族はのべ1564人(約0・7%)だった。1千人への照会で、仕送りにつながったのは7人に満たない計算になる。
※朝日新聞デジタル
自分がお金を出すよりも生活保護から出してほしいと考えるのが普通です。
実際には扶養照会自体に意味は無いのですが、不正受給を防ぐためにも過度に扶養照会が行われていました。
2021年以降は扶養照会に関する運用が変わっているので、扶養照会してほしくない理由がある人は福祉事務所に相談してください。
周囲の人に知られる
自治体から生活保護に関する情報が漏れることはありませんが、生活保護を受けていることが周囲にバレる可能性はあります。
高齢者や独身、近隣との付き合いがない人は問題ないと思いますが、未成年のお子さんがいる家庭では、周囲にバレるのが嫌で生活保護を受けない人もいます。
ただ、生活に困窮している人が生活保護を受けるのは当然の権利なので、周りの目を気にする必要はないでしょう。
働けるなら働いて、心身的な事情で働けないのであれば生活保護を受けてください。
親が生活保護を受けたときのデメリット
生活保護は世帯で受けるものなので、同居する子どもがいれば子どもへの影響も考えられます。
- 衣食住に困らなくなる
- 医療費などがサポートされる
- 義務教育でかかる費用が軽減されて他の費用に回せる
親が生活保護を受けたときの子どもの年齢にもよりますが、多感な時期の子には大きな影響を与える可能性があります。
しかし、既に生活に困窮しているから生活保護を受けるわけですから、生活保護を受けなくてもデメリットで挙げたようなことは起こり得ます。
生活保護を受けるとローンが組めなくなるので、教育ローンの審査に通ることはできませんが、日本学生支援機構の奨学金は受けられます。
実際には子どもへの影響を考えて生活保護を申請しないようなケースはほとんどないと思います。生活保護を受けることで、今までできなかったことができる可能性もあります。
親が生活保護を受けていると就活に影響するのでは?と考える学生もいますが、就活で親の収入状況などが調べられることはありません。
万が一、親の生活保護が原因で就職試験に落ちるようなら、そんな会社には入らなくて良かったと思いましょう。まともな会社なら親の生活保護を理由に落としたりしません。
別世帯の親が生活保護を受ける場合
成人している子供がいる状態の親が、生活保護を受けるケースも珍しくありません。
別世帯の親が生活保護を受けたとしても、子供にデメリットはありません。自治体から親の援助について連絡が来る可能性はありますが、それを他人に知られることはないでしょう。
生活保護は世帯で受けるものなので、同一世帯の親が生活に困窮している場合は、働いている子がいれば助けるのが普通です。
問題は、別世帯の親が生活に困窮しているときに、子供が助けるべきなのか、生活保護を受けるべきなのかという点だと思います。
これについては、人それぞれの考え方による部分も大きいので正解はありません。当事者同士で話し合い、解決するのがよいでしょう。
仮に子供が裕福な生活をしていたとしても、別世帯の貧しい親は生活保護が受けられます。親の生活保護申請の合否と、子供の収入の多さは関係ありません。
子供が裕福なら助けるべきと考える人も多いようですが、色々な親子関係がありますし、法律で援助しなければいけないと決められているわけでもありません。
親側の意向で、子供から援助されるよりも生活保護の方がよいと考え、子供に内緒で申請する場合もあるでしょう。
縁を切った親を援助する義務はない
親が生活保護を受ける際の扶養照会で役所から連絡が来て、親への援助を決める人もいます。
しかし、子どもの親に対する扶養義務は厳しくありません。扶養を外れていれば親が生活保護を受けても子どもへの影響はありません。
親族間の扶養義務には、生活保持義務と生活扶助義務の2つがあります。
生活保持義務 |
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生活扶助義務 |
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一般的に扶養義務と言われるのは生活保持義務の方で、配偶者や親が責任を負うものです。
成人した子どもに対する親の扶養義務は生活扶助義務なので、自分の生活を犠牲にしてまで援助する必要はありません。
同様に、親に対する子どもの扶養義務も生活扶助義務なので、援助を頼まれても断る権利があります。ましてや縁を切ったような親なら助ける必要はありません。
生活保護法においては、援助できる子どもがいたとしても、親は生活保護を受けることができます。
有名芸能人の親が生活保護を受けていたことがニュースになった時期がありますが、必ずしも不正受給とはいえません。
親が生活保護を受けるときの子供の収入
同一世帯の子どもに収入があると、生活保護の受給に影響が出る可能性があります。
同一世帯の子どもに十分な収入がある場合は、生活保護を受けることができません。
生活保護世帯の子どものアルバイト収入を申告していなかったことが、生活保護費の不正受給に当たるかどうかが争点になった裁判があります。
生保不正受給処分取り消し 横浜地裁が判決
判決によると、男性と妻は共に病気で働くことができず、2010年から生活保護を受給。長女は高校2年から3年にかけて、アルバイトで計約32万円の収入を得たが、11年に市の課税調査で判明するまで、市に伝えていなかった。
倉地裁判長は、受給者向けのしおりに記載されていた高校生のアルバイト収入の申告義務について、担当のケースワーカーがしおりの内容を丁寧に説明しないなど男性に伝えていなかったと認定。しおりの交付だけでは不十分とし、男性が故意に申告しなかったとする市側の主張を退けた。
※神奈川新聞
アルバイト収入が、修学旅行費や大学受験費用などに使われたことで収入には当たらない点や、ケースワーカーの説明が不十分だったことで、不正受給には当たらないと判断されました。
別世帯の親が生活保護を受ける際に、子どもの収入が高くても問題ありません。
子どもが裕福でも生活保護は受けられますし、子どもに親を援助する義務はありません。
子供のアルバイト収入
高校などに通う子どものアルバイト収入については、2014年(平成26年)に要領が改正され、お金の使い道が就学や今後の就労に関するものなら認められることが多くなりました。
今般、高等学校等に就学中の者のアルバイト等の収入について、次のいずれにも該当する場合には、当該被保護者の高等学校等卒業後の就労や早期の保護脱却に資する経費に充てられることを福祉事務所が認めた場合において、これに要する必要最小限度の額を収入認定除外の取扱いが可能となるよう、実施要領等の改正を行うこととする。
- 高等学校等卒業後の具体的な就労や早期の保護脱却に関する本人の希望や意思が明らかであり、また、生活態度等から学業に支障がないなど、特に自立助長に効果的であると認められること。
- 使途が次のいずれかに該当し、かつ、当該経費の内容や金額が、具体的かつ明確になっていること。
- 就労に資する技能を修得する経費や自動車運転免許費用(技能修得費の給付対象となる場合を除く。)
- 就労に資する資格を取得することが可能な専修学校、各種学校又は大学に就学するために必要な経費(事前に必要な入学料等に限る。)
- 就労や就学に伴って、直ちに転居の必要が見込まれる場合の転居に要する費用
- 国若しくは地方公共団体により行われる貸付資金又は国若しくは地方公共団体の委託事業として行われる貸付資金の償還金
- 当該被保護者から提出のあった具体的な自立更生計画を、福祉事務所が事前に承認していること。
※厚生労働省「生活保護法の改正について」
高校卒業後の就労や、資格取得、就学に関する費用などに使われ、福祉事務所が認める場合はアルバイト収入は収入認定から除外されます。
事前に申告せずにアルバイト収入を得ると問題になることもあるので、必ず事前に福祉事務所の承認を得るようにしてください。
生活保護を受けるメリット
- 保護費が受け取れる
- 所得税や住民税が免除される
- 国民健康保険料の支払いが免除される
- 国民年金保険料の支払いが免除される
- 医療費が無料になる
- NHK受信料が免除される
- 保育料が免除される
生活保護を受けるメリットは、何と言っても働かずに収入が得られることです。年齢や世帯によって受け取れる金額が違いますが、その地域で最低限生活していけるだけの収入は得られます。
生活扶助の他にも住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助などが受けられます。
また、生活保護受給者は、国民年金保険料の支払いが免除され、医療費が無料になるので、健康保険税の支払いも必要無くなります。
保護費には所得税や住民税がかからないので、サラリーマンで言えば手取り金額になります。生活保護者は、思ったよりも余裕のある生活が送れるかもしれません。
生活保護から復帰するのは大変
生活保護を受けると、定期的に担当者(ケースワーカー)が自宅を訪問します。担当者は、地元で知られていることもあり、周囲の人に、生活保護を受けていることがバレる可能性があります。
プライバシー保護の観点から、ケースワーカーが情報を漏らすことはありませんが、お子様がいる家庭の場合、親のネットワークから知られてしまう可能性が高いです。
また、生活保護で安定した生活が送れるようになると、その後仕事に就いて収入を得るのが難しくなります。一度生活保護を受けると、抜け出すのは大変です。
高齢者で今後働く予定がない人は良いですが、20代や30代で生活保護を受けてしまうとその後が大変です。働かずに収入を得てしまうと人間は腐ってしまいます。
どうしようもない人が生活保護を受けるのは当然ですが、働きたくない、好きな仕事がないなどの理由で、生活保護を受けると良いことはありません。
頑張れば働ける人は、お金を借りてなんとか凌ぎ、少しずつ生活を立て直すのも一つの手です。
生活保護を受けている世帯数
生活保護は申請しても役所で断られるから行きたくないと考える人も多いです。
生活保護の不正受給も多いので、役所の担当者が厳しくなるのも当然なのですが、実際には生活保護を受けるべき人が認められていないケースも多いです。
厚生労働省は、生活保護の被保護者調査を行っており、毎月の被保護世帯の数や申請件数などを公開しています。
被保護世帯 | 世帯数 | 割合 |
---|---|---|
高齢者世帯 | 907,424件 | 55.2% |
母子世帯 | 65,166件 | 4.0% |
障害者世帯 | 411,673件 | 25.0% |
その他 | 260,102件 | 15.8% |
総数 | 1,642,704件 | 100% |
生活保護を受けている人は、高齢者や障害者(傷害者)が多いです。
2020年度の生活保護費の不正受給は3万2090件で、件数で見れば多いのですが、生活保護を受けている世帯数の全体で見れば2%ほどです。生活保護費負担金の額と不正額の割合で見ると0.3%ほどです。
生活保護の不正受給は問題ですが、保護を受けるべき人が受けられていないことも問題視されています。生活保護の対象となる人で、実際に保護が受けられているのは3割ほどと言われています。
申請件数と保護開始世帯数
2023年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 19,633 | 22,680 | 21,681 | 22,627 | 21,341 | ||||||||
保護開始 | 17,851 | 19,847 | 18,398 | 18,934 | 18,067 | ||||||||
通過率 | 90.92% | 87.50% | 84.85% | 83.67% | 84.65% |
2022年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 17,758 | 20,353 | 20,881 | 22,016 | 20,562 | 21,368 | 19,700 | 21,433 | 17,706 | 20,095 | 19,321 | 24,493 | |
保護開始 | 15,676 | 17,039 | 17,935 | 18,489 | 17,555 | 18,397 | 17,716 | 19,522 | 17,532 | 15,937 | 17,300 | 22,190 | |
通過率 | 88.28% | 83.72% | 85.89% | 83.98% | 85.37% | 86.10% | 89.92% | 91.08% | 99.01% | 79.3% | 89.5% | 90.5% |
2021年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 19,165 | 18,400 | 19,478 | 20,757 | 19,202 | 20,156 | 18,726 | 21,093 | 17,751 | 19,334 | 16,023 | 19,793 | 19,158 |
保護開始 | 17,487 | 15,607 | 17,012 | 17,201 | 16,139 | 17,829 | 16,637 | 18,447 | 17,648 | 15,688 | 15,232 | 17,751 | 16,891 |
通過率 | 91.24% | 84.82% | 87.34% | 82.87% | 84.05% | 88.46% | 88.84% | 87.46% | 99.42% | 81.14% | 95.06% | 89.68% | 88.17% |
2020年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 21,486 | 17,981 | 17,190 | 19,650 | 17,451 | 18,998 | 18,621 | 19,072 | 17,308 | 20,061 | 17,424 | 22,839 | 19,009 |
保護開始 | 19,362 | 16,906 | 15,142 | 16,036 | 14,766 | 16,613 | 16,928 | 16,905 | 17,272 | 16,072 | 16,518 | 20,336 | 16,906 |
通過率 | 90.11% | 94.02% | 88.09% | 81.61% | 84.61% | 87.45% | 90.91% | 88.64% | 99.79% | 80.12% | 94.80% | 89.04% | 88.93% |
2019年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 17,213 | 19,910 | 17,976 | 22,113 | 18,168 | 18,665 | 18,286 | 18,572 | 16,246 | 18,660 | 16,118 | 21,026 | 18,587 |
保護開始 | 16,859 | 15,724 | 16,158 | 18,745 | 16,009 | 16,036 | 17,523 | 16,480 | 18,660 | 14,992 | 15,042 | 18,716 | 16,564 |
通過率 | 97.94% | 78.98% | 89.89% | 84.77% | 88.12% | 85.91% | 95.83% | 88.74% | 114.86% | 80.34% | 93.32% | 89.01% | 89.12% |
2018年度 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 月平均 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
申請件数 | 17,250 | 20,913 | 18,454 | 21,162 | 19,262 | 17,857 | 19,015 | 19,997 | 15,698 | 18,498 | 16,693 | 19,582 | |
保護開始 | 15,843 | 18,062 | 16,431 | 17,683 | 17,278 | 15,472 | 17,656 | 18,018 | 16,224 | 14,760 | 15,533 | 17,213 | |
通過率 | 91.84% | 86.37% | 89.04% | 83.56% | 89.70% | 86.64% | 92.85% | 90.10% | 103.35% | 79.79% | 93.05% | 87.90% |
2020年以降は生活保護申請数が増えていると思ったのですが、現時点では2019年と比較して増加傾向は見られません。
毎月の申請件数と保護開始数を基に通過率を算出していますが、その月に申請されたものに対する保護開始数ではありません。
申請から保護開始までにはタイムラグがありますが、月平均値で見ると毎月1.9万件ほどの申請件数があり、1.7万件ほどの世帯の生活保護が開始されています。
申請者の9割近くが生活保護が受けられていることになりますが、生活保護の相談件数と申請件数は全く違います。
相談件数と申請件数
生活保護の相談件数は、ほとんどの自治体で公表されていませんが、一部の地域で相談件数が公開されていたので載せておきます。
自治体 | 相談件数 | 申請件数 | 開始数 |
---|---|---|---|
京都市 | 12,171 | 3,934 | - |
愛知県 | 30,804 | 10,500 | 9,639 |
名古屋市 | 20,219 | 6,867 | 6,394 |
岡崎市 | 1,549 | 281 | 240 |
豊田市 | 1,320 | 253 | 240 |
愛知自治体キャラバン資料
京都市が2022年のデータで、愛知県が2020年のデータです。
相談件数と申請件数は、市区町村によっても大きな差が出そうですが、相談しても申請まで行ける人は3割程度なのでしょう。
その中には、不正受給者、働ける人、援助が受けられる人も含まれるので、実際どれくらいの人が生活保護を受けるべき人なのかはわかりません。
申請者の8割以上は生活保護を受けられますが、相談者の7割は申請できていないのが実情です。
生活保護の申請を手助けしてもらえる団体
生活保護は申請書を貰い申請するところまで行くのが難しいと言えます。
役所が生活保護の申請を断るのは違法行為ですが、申請書がもらえないと申請することはできません。
色々な理由をつけて申請を受け付けない役所も多いので、専門家に同行してもらうのがよいでしょう。
生活保護は、原則として本人や同居の親族が申請するものですが、弁護士が保護開始申請の代理業務を行っています。
法テラスは国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です。全国各地に事務所があるので、まずは電話相談してみましょう。
NPO法人なども生活保護や生活相談に乗ってくれます。
この4つの団体は怪しい団体ではないと思いますが、生活保護は不正受給をしたり、生活保護費を奪い取る反社も多いので注意しましょう。
生活保護受給者の自己破産
生活保護費から借金を返済することはできませんが、生活保護を受けている人が自己破産するケースはあります。
借金で首が回らなくなったときに生活保護の相談をして、生活保護を受けてから自己破産するような場合です。
自治体の担当者に自己破産してから生活保護の申請をするように言われることが多いですが、生活保護の申請と自己破産手続きの順番は自由です。
自己破産は法テラスへ相談
民間の法律事務所や司法書士事務所では行うことのできない、民事法律扶助業務や司法過疎対策業務などを行う日本司法支援センターは、「法テラス」と呼ばれています。
法テラスは、お金がなくて弁護士や司法書士に相談できない人を助ける案内所です。
- 全国各地にある法テラス事務所へ行って相談する
- 法テラスと契約している民間の弁護士や司法書士の事務所から相談する
民事法律扶助は、弁護士や司法書士へ無料で相談することができます。生活保護受給者は、弁護士や司法書士への報酬や書類作成のための費用が免除されます。
生活保護受給者の債務整理は自己破産
借金を減額または免除する債務整理の方法は4種類あります。
任意整理は、「債権に過払い金が発生している場合に借金が大幅な減額またはゼロになる」可能性はありますが、基本的には、将来利息のカットに応じるため、借金がゼロになることはありません。
特定調停は、「将来利息のカットについて調停委員が債務者と債権者の間に入って裁判所で行う」形式なので借金が無くなることはありません。過払い金があったとしても、特定調停では話し合えません。
個人再生は、「継続的に収入を得ていること」が利用条件の1つになっています。アルバイトをしている人や年金受給者は含まれますが、無職の人や生活保護受給者は該当しません。
自己破産は、支払不能や債務超過の状態であると判断されれば、財産を処分して、借金をゼロにすることができる救済制度です。
以上のように、債務整理の4つの特徴を考慮すると、生活保護受給者は、自己破産を選択することになります。
自己破産費用の免除
生活保護受給者が自己破産すると、自己破産にかかる費用が免除されます。
予納金 | 裁判所に支払う費用 |
弁護士費用 | 弁護士に支払う費用 |
自己破産するときの弁護士費用は20~50万円かかりますが、法テラスが行っている民事法律扶助制度により費用を立て替えてくれるので、生活保護受給者は支払う必要がありません。
生活保護を受けていても自己破産しなければ借金の取り立ては続きます。借金を抱えたまま生活保護を受けている人は、すぐに弁護士に相談しましょう。