仕事中に高所から落ちて大怪我をした、業務上に事故に合いしばらく仕事を休むことになった、通勤途中に転倒し骨折して入院することになった…これらはいわゆる労災(労働災害)と言われます。

業務上のケガや病気は、労災と認められた場合「休業補償」として給付金が支給されます。

このページでは、休業補償給付と労災について、休業補償と混同されがちな休業手当について、その他ケガや病気で休業した時に支給される傷病手当や傷病手当金についてもご紹介します。

休業補償

休業補償とは、業務上・通勤途中の事故や病気によって負傷し働くことができなくなった場合に、労災保険により休業の補償として保険給付が行われるものです。

労働者が、業務または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付(業務災害の場合)、複数事業労働者休業給付(複数業務要因災害の場合)または休業給付(通勤災害の場合)が支給されます。

※引用元:厚生労働省

事業主の方は、ひとりでも労働者を雇ったら労働保険(労災保険・雇用保険)に加入する義務があります。

業務上のケガや病気、通勤中の負傷が起きた場合には、この労災保険によって休業補償の保険給付が行われることになっています。

労災保険の休業補償とは
  • 業務上の事由・通勤によるケガや病気は労災保険で補償される
  • 事業主は労災保険に加入する義務がある
  • ケガや病気、死亡した場合に労働者や遺族に対して保険給付を行う

休業補償の対象は賃金を支払われている労働者です。従って常時雇用されている労働者だけでなく、臨時雇用、日雇い、パートやアルバイトでも受けられます。

労災保険は政府管掌の制度

労災保険は政府管掌の強制加入制度です。事業主が労働者を雇った際には、雇用してから10日以内に労働基準監督署に届け出て、加入手続きする必要があります。

労災保険とは
  • 労働保険制度は昭和50年に全面適用
  • 事業主はひとりでも雇ったら加入義務がある制度
  • 労働基準監督署で手続きを行う
  • 令和2年度末現在で約337万事業が加入
  • 未加入事業も相当数存在

事業主はひとりでも雇ったら労働保険に加入しなければならないことになっていますが、未加入の事業も多数存在しています。

ちなみにですが、労災保険未加入で労働基準監督署から加入手続きするよう指導されたにも関わらず加入しない場合には、遡って労働保険料を納めるほか、追徴金も払う必要が出てきます。

労働者が仕事中や通勤中に事故や病気で負傷した際には、労働基準監督署に届け出ることで、労災保険から休業補償の保険給付が行われます。

労災保険の保険給付の種類

労災保険は、賃金を受けられない時の休業補償給付以外にも保険給付があります。

保険給付の種類 内容
休業補償給付 労働できず賃金を受けられないとき
療養補償給付 医療機関で療養を受けるとき
障害補償給付 傷病が治って該当する身体障害が残ったとき
傷病補償年金 1年6ヵ月たっても治らず傷病等級に該当するとき
介護補償給付 障害補償年金または傷病補償年金の一定の障害により介護を受けているとき
遺族補償給付 労働者が死亡したとき
葬祭料(葬祭給付) 労働者が死亡したとき

労災によって仕事ができなくなり賃金を受けられないときには「休業補償給付」があり、労災によって医療機関で治療を受ける際には「療養補償給付」で100%支給されるので、治療費や入院費の自己負担はありません。

休業補償の3要件

休業補償が給付されるには、以下の3つの要件を全て満たす必要があります。

休業補償の要件
  1. 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養
  2. 労働することができない
  3. 賃金を受けていない

上記3つの要件を満たす場合に、4日目から休業補償が支給されます。

3日目までは事業主が補償

労災保険の休業補償は4日目からなので、3日目まではどうなるの?と心配になる方もいるかもしれません。

休業初日から3日目までについては、労働基準法第76条で、事業主が休業補償を行うこととなっています。

事業主の負担
  • 休業3日目までの休業補償は事業主負担
  • 1日につき平均賃金の60%支給
  • 3日間の休業補償を受けられない場合に要件を満たせば休業補償特別援護金

労災によって労働できなくなった労働者に対して、3日目までは事業主が平均賃金の60%を支払い休業を補償します。

いつまで支給?

労災の休業補償は、3要件を満たす限り支給されますが、1年6ヵ月経過しても傷病がなおらず、傷病等級に該当する障害がある場合は、傷病補償年金に切り替わって支給されます。

療養開始後、1年6ヵ月を過ぎても傷病補償年金の支給要件を満たさない場合は、休業補償給付の申請時に「傷病の状態等に関する報告書」を提出する必要があります。

  • その負傷または疾病が治っていないこと
  • その負傷または疾病による障害の程度が傷病等級表の疾病等級に該当すること

上記2つの要件を満たす場合には、休業補償から傷病補償年金の支給にかわります。

怪我や病気が「治った」とは完全に元の状態になることだと思うかもしれませんが、労災保険において「治った」はちょっと違います。

「治ったとき」とは

労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいい、この状態を労災保険では「治癒」(症状固定)といいます。

※引用元:厚生労働省労災保険パンフレット

労災保険の治癒とは、症状が固定してこれ以上回復・改善の見込みがない状態のことをいいます。

「治ってないのに労災保険が打ち切られた」と聞くことがありますが、これ以上治療しても症状の回復が期待できない状態=症状固定=治癒と、労働基準監督署が判断したのだと思います。

なお、傷病補償年金が受給できる傷病等級は1級から3級までです。参考までに1級の障害の状態を載せます。

労災保険の傷病等級【1級】

  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
  3. 両眼が失明しているもの
  4. そしゃく及び言語の機能を廃しているもの
  5. 両上肢を肘関節以上で失ったもの
  6. 両上肢の用を全廃しているもの
  7. 両下肢を膝関節以上で失ったもの
  8. 両下肢の用を全廃しているもの
  9. 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの

※引用元:厚生労働省労災保険パンフレット

2級と3級についても障害の状態が細かく定められています。

傷病等級 傷病補償年金 傷病特別支援金 傷病特別年金
1級 313日分 114万円 313日分
2級 277日分 107万円 277日分
3級 245日分 100万円 245日分

傷病等級に応じて、給付基礎日額の傷病補償年金と傷病特別支給金(一時金)、傷病特別年金が支給されます。

通院治療費が全額支給される療養補償給付については、いつまでということがなく傷病が治癒するまで支給されますが、こちらも症状が固定されるまでの補償です。

業務外の病気やケガについて

業務外の病気やケガは、労災保険に該当せず休業補償給付は受けられませんが、加入している健康保険に申請すると「傷病手当金」が支給されます。

傷病手当金については、後ほど詳しくご説明します。

休業補償の給付額

労災保険の休業補償の給付額は以下の通りです。

休業補償の計算方法
  • 休業1日につき給付基礎日額の80%支給
  • 80%=休業補償給付60%+休業特別支給金20%
  • 事故が発生した日の直前3ヵ月間の総額から1日当たりを計算

休業補償の給付額は、事故が発生した日の直前3ヵ月間に支払われた金額の総額から、その期間の総日数で割って日額(給付基礎日額)を計算します。

なお、3ヵ月の総日数とは、労働日数だけでなく休日も含んだ歴日数となっています。

給与20万円の場合

  • 20万円✕3ヵ月÷92日=6,521円73銭(1円未満の端数は切り上げ)
  • 給付基礎日額は6,522円
  • 休業補償給付:6,522円✕0.6=3,913円20銭
    休業特別支給金:6,522円✕0.2=1,304円40銭(1円未満の端数は切り捨て)
  • 3,913円+1,304円=5,217円
  • 休業補償の日額=5,217円
  • 10日休業した場合=36,519円
  • 30日休業した場合=5,217円✕27日=140,859円

例えば給与20万円の場合は、上記のように休業補償の日額が5,217円となります。

休業補償は4日目から支給されるので、10日間休業した場合は7日間で36,519円、30日間休業した場合は27日の支給で140,859円が振り込まれます。

休業補償の最低保障額(令和3年8月~)

休業補償の給付基礎日額は、平均賃金で算定することが原則ですが、給付基礎日額が低い場合には、最低保障額が適用されます。最低保障額は毎年8月に見直されます。

最低保障額
  • 最低保障額は3,940円
  • 給付基礎日額が下回ると最低保障額が適用

仮に、給付基礎日額が3,000円の場合には最低保障額を下回っていますので、最低保障額の3,940円が適用となります。

  • 休業補償給付:3,940円✕0.6=2,364円
  • 休業特別支給金:3,940円✕0.2=788円
  • 2,364円+788円=3,152(休業補償の日額)
  • 10日休業した場合=22,064円
  • 30日休業した場合=85,104円

休業補償はこのように算定されます。

休業補償が振り込まれるまでの期間

休業補償給付の標準処理期間は1ヵ月となっていますが、労災の状況によって調査内容が異なるため、支給までの時期はそれぞれ異なります。

労災で仕事へ行けず収入がなくなってしまった方は、労災の認定がいつ出るのか、休業補償はいつ支給されるのかが気になるところであり、生活費の心配もあると思います。

労災保険の給付には標準処理期間が定められています。

支給までの期間
  • 休業補償給付の標準処理期間は1ヵ月
  • 負傷に起因する疾病については6ヵ月
  • 精神疾病については8ヵ月
  • 精神障害、脳・心臓疾患、石綿関連疾患、交通事故等は1年以上かかる場合もある
  • 認定されるとハガキが届く

休業補償給付と療養補償給付の標準処理期間は1ヵ月で、請求から支給までは1~2ヵ月かかります。

労働者災害補償保険法 標準処理期間
休業補償給付 1ヵ月
疾病に係るもの 6ヵ月
精神障害に係るもの 8ヵ月
疾病のうち包括的救済規定に係るもの 期間を定めない

労災の内容にもよりますが、誰が見ても明らかな労災というようなものだと支給まで1ヵ月~2ヵ月程度、精神疾患など審査が難しいものだと1年かかる場合もあるようです。

申請書類や添付書類に不備がある場合や、労働基準監督署が混雑している場合には、これ以上かかることもあります。

労災認定の審査を行い結果が出ると、「支給決定通知、支払振込通知」が一体になったハガキが送られてきます。

労災保険の請求は、給付を受ける本人が書類に記入して事業主に出し、事業主が労働基準監督署に提出する流れです。

会社に書類を出したからOKではなく、会社が労働基準監督署に提出して受付が完了します。スムーズに手続きや認定が進むように、被災した際には、速やかに書類を提出するようにしましょう。

会社が労災を認めない・手続きしない場合

労災については、よく会社が労災と認めない、労災の手続きをしてくれないなどの話も聞きます。厚生労働省のホームページに、そのような時にはどうなるのかが載っていました。

Q:労働者が業務中に傷病を負いましたが、会社(事業主)が責任を認めません。労災保険の給付は受けられるのでしょうか。

A:労災保険の給付は受けられます。
労働者が事業(又は通勤)により負傷した場合などには、労働者本人が労働基準監督署に労災保険給付の請求を行い、当該請求に基づいて労働基準監督署が支給・不支給の決定を行いますので、労災と認められるかどうかは事業主が決めるわけではありません。また、労災保険は使用者の無過失責任を原則としていますので、業務と傷病の間に相当因果関係が認められれば、労災保険給付が行われます。
なお、会社が事業主証明を拒否するなどで、事業主証明が得られない場合であっても、労災保険の請求はできますので、労働基準監督署にご相談ください。

※引用元;厚生労働省

労災保険の請求は、労働者が会社に書類を提出し、会社が労働基準監督署に請求する形が一般的ですが、労働者本人が労働基準監督署に直接請求することも可能です。

事業主が労災を認めない・労災に未加入
  • 労働者本人が労働基準監督署に直接請求してもよい
  • 労災の認定は会社ではなく労働基準監督署が決定する
  • 事業主が労災保険に未加入でも労災保険を受け取ることができる

会社が労災と認めず手続きしてくれない場合や、そもそも会社が労災保険に入っていない場合などでも、労働者本人が労働基準監督署に請求することで、労災保険の支給を受けることができるようになっています。

労働基準監督署には管轄地域が決まっています。

労災保険の請求は、事業や勤務先を管轄している労働基準監督署です。住まいでなく会社の住所を管轄している労働基準監督署へ行って手続きをしましょう。

休業手当

続いて休業手当についてご紹介します。

休業手当とは、雇用主の責任で従業員を休ませた場合に支給する手当のことです。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

※引用元:労働基準法第26条

使用者(会社)の都合で労働者を休ませた際には、休業手当として平均賃金の60%を支払う義務があります。これは労働基準法によって決まっています。

休業手当とは
  • 使用者の責任で労働者を休業させた場合は休業手当を支払わなければならない
  • 休業手当は平均賃金の6割以上
  • 労働者の最低限の生活の補償を図ることが目的
  • 社員だけでなくパートやアルバイトも手当の対象

一般的には働いた分の対価が労働者に支払われますが、会社の都合で休業させた場合に、従業員は生活できなくなってしまいます。

そのため、休業が会社都合の場合は、労働者の最低限の生活保障を図るため、休業手当を支払う必要があります。

休業手当が支払われるケース

休業手当が支払われるのは、「使用者の責に帰すべき事由」による休業で労働者を休ませた場合です。

具合的な事由
  • 経営悪化で業務量減少による休業
  • 仕事がない、製品が売れない、資金調達が困難等で休業
  • 資材不足による休業
  • 従業員不足による休業
  • 親会社の経営難による休業
  • 予約が少なく余剰人員が出たため休業
  • 店舗改装による休業

「使用者の責に帰すべき事由」とは、事業主の故意や過失だけでなく、経営上や管理上の要因に起因するものも全てです。

休業手当が支払われないケース

  • 天災地変等の不可抗力による休業
  • 緊急事態宣言の対象地域による休業

天災地変のような不可抗力による休業は、休業手当の支払い義務はありません。

不可抗力による休業とは
  1. その原因が事業の外部により発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること

上記のいずれも該当する場合に限り、不可抗力による休業と言えます。

例えば、昨今の新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や要請での休業、東日本大震災など災害による休業などが不可抗力による休業です。

新型コロナに関連した休業について

新型コロナ関連で労働者が休業する場合に、休業手当が支払われるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省は事業者に対して、新型コロナ関連で労働者を休ませる場合には、労使で十分に話し合うこと、労使で協力すること、労働者が安心して休むことができる体制を整えることとしています。

労働者が新型コロナに感染して休業する場合

新型コロナに感染して休業することは「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないので、休業手当は支払われません。

※健康保険被用者の方は、要件を満たすと「傷病手当金」が支給されます。

労働者に発熱などの症状があり自主的に休んでいる場合

発熱があり新型コロナかどうかわからず労働者が自主的に休んでいる場合は、通常の病欠と同じ扱いになり、休業手当は支払われません。

発熱などの症状があり使用者の自主的な判断で休業させる場合は、「使用者の責に帰すべき事由」に該当するため、休業手当の支払義務があります。

新型コロナの濃厚接触者になった場合

濃厚接触者になると保健所から10日間の外出自粛要請があり、「使用者の責に帰すべき事由」とはならないため休業手当は支払われません。

ただし、行政からの外出自粛要請の対象とならない者や、発熱者を使用者が自主的な判断で休ませた場合には、休業手当が支払われます。

濃厚接触者で休業させる場合は、在宅ワーク等の方法によって労働をさせることが可能なら使用者は最善の努力をしなくてはなりません。

最善の努力をしないで休業させたときには、「使用者の責に帰すべき事由」に該当し休業手当を支払う必要があります。

休業手当の金額

休業手当の金額は、平均賃金の60%以上となっています。60%は最低基準ですので、労使協議により60%よりも多く手当が支給されることもあります。

休業手当の金額
  • 平均賃金の60%以上
  • 平均賃金とは休業日前3ヵ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数で割った額
  • 時給制、日給制、出来高制の場合は最低保障額の定めあり

休業手当は休業期間前の3ヶ月間に支払われた資金の総額を総日数で割った額で平均賃金を算定し、その60%の金額が1日あたりの休業手当となります。

平均賃金の計算式

①3ヶ月間の賃金総額÷3ヶ月間の歴日数=平均賃金(1円未満切捨)

以上のように計算して1日あたりの平均賃金を算定、その60%を休業手当として支払います。

パートやアルバイト、日雇いなど、日給制や時間給の場合には、上記の計算式で計算すると平均賃金が低くなってしまうため、最低保障額の計算式でも計算します。

平均賃金の最低保障額(日給制、時間給制、出来高制の場合)

②3ヵ月間の賃金総額÷3ヵ月間の労働日数✕0.6=平均賃金(1円未満切捨)

原則の計算式①と最低保障額の計算式②で計算し、どちらか大きい金額が平均賃金となります。

月額20万円の場合

  • 60万円÷92日=6,521円73銭
  • 6,521円✕0.6=3,912円6銭
  • 休業手当=3,912円
  • 休業日数10日:3,912円✕10日=39,120円
  • 休業日数15日:3,912円✕15日=58,680円

月額8万円のパート週3の場合

  • ①24万円÷92日=2,608円69銭
    ②24万円÷45日✕0.6=3,200円
  • 平均賃金=3,200円
  • 休業手当=1,920円
  • 休業日数5日:9,600円
  • 休業日数15日:28,800円

なお賃金総額には、通勤手当、皆勤手当、年次有給休暇の賃金、昼食料補助なども含まれます。臨時に支払われた結婚手当や退職金等は含みません。

休業手当と休業補償の違い

休業補償と休業手当は混同している方がいますが、全く違うものです。

比較 支払元 内容
休業手当 事業主 会社都合で休業する場合に労働者に対して平均賃金の60%を支払う
休業補償 労災保険 業務上のけがや病気に対して労災保険で平均賃金の80%を支給

休業手当と休業補償は、どちらも労働者の生活保障を図るためのもので、雇用形態に関係なく正規雇用、非正規雇用、パート、アルバイト、日雇い等など、事業で労働している方全てが受けられるものです。

休業手当は使用者の都合で休業する場合に、労働者に支払う手当で、労働基準法では平均賃金の60%以上支払うことが義務となっています。

一方で休業補償は、業務上や通勤で怪我や病気になった時に、労災保険から休業補償給付として平均賃金の80%が支給されるものです。

傷病手当金

業務上のケガや病気は労災保険の休業補償が給付されるものの、業務外でケガや病気になった場合にはどうなるのでしょうか。

そんな時には、健康保険に申請すると「傷病手当金」の支給が受けられます。

傷病手当金とは
  • 業務外の病気やケガで休業した場合に支給
  • 3日間は待機期間で4日目から支給
  • 支給開始日から1年6ヵ月まで支給
  • 労災保険の休業補償給付を受けている場合は傷病手当金は支給なし

傷病手当金は、業務外の病気やケガで休業した被保険者と家族の生活を保障するための制度です。

傷病手当金の支給条件

傷病手当金の支給が受けられる条件は以下の通りです。

傷病手当金の支給条件
  • 業務外の病気やケガのために療養中で休業している
  • 仕事に就けない(労務不能)
  • 4日以上仕事を休んでいる
  • 休業した期間に給与の一部または全部が支払われていない

上記の条件を全て満たす場合に支給されます。

傷病手当金は4日以上連続して休んだ場合に支給されます。最初の3日間は待機期間で支給はありませんが、4日目以降支給されます。

傷病手当金の支給額

支給金額は給料の3分の2程度の額です。

休業1日あたり=支給開始日以前の12ヵ月間の各月の標準月額平均した額÷30日✕3分の2

健康保険に加入している期間が1年未満の場合

  • 支給日以前の全加入期間の標準報酬月額の平均額÷30
  • 保険組合の標準報酬月額の平均額÷30

※どちらか低い額の3分の2が支給されます。

健康保険組合の多くは、上記のように傷病手当金を算定していますが、保険組合によって独自の支給がされる場合もあります。

申請には医師の証明書等が必要です。

国民健康保険の場合

国民健康保険に加入している方は、傷病手当金の決まりがなく支給がありませんでしたが、新型コロナの感染拡大を受けて、コロナに感染して療養のために休業する場合は、傷病手当金の支給が受けられるようになりました。

国保の傷病手当金
  • 国民健康保険の被用者(会社等に雇用されている方)
  • 新型コロナウイルスに感染した方または発熱等の症状があり感染が疑われる方
  • 事業主から給与の支払いが受けられない方または一部減額して支払われている方

国民健康保険加入の方は、上記3つの条件を全て満たす場合に傷病手当金が支給されます。自営業、個人事業主、フリーランスの方は対象外です。

1日あたりの支給額=直近の継続した3ヵ月間の給与収入の合計額÷就労日数✕3分の2
※1日あたり支給上限30,887円

支給額=1日あたりの支給額✕支給対象となる日数

傷病手当金は待機期間3日間は支給されず、4日目以降支給されます。

傷病手当金の受給には、本人記入の書類の他に、医療機関の証明書や、事業主が記入する書類が必要です。

申請場所は市区役所や町村役場の国民健康保険の窓口です。郵送での申請を受け付けているところが多いので、電話で問い合わせてみることをおすすめします。

傷病手当金と傷病手当の違い

傷病手当金に似たような名称の「傷病手当」があります。

名称 内容
傷病手当金 病気休業中に事業主から十分な報酬が受けられないときに健康保険から支給
傷病手当 雇用保険受給資格者がハローワークで休職中に病気やケガで15日以上仕事に就けないときに支給

傷病手当については、仕事を辞め、ハローワークで雇用保険の手続きをして受給資格者となり、病気やケガで15日以上仕事に就けないときに支給されるものです。

傷病手当金は健康保険に申請しますが、傷病手当はハローワークで申請します。

傷病手当

傷病手当とは、雇用保険受給資格者が病気やケガで15日以上仕事ができない状態の時に支給される手当のことです。

雇用保険受給資格者の傷病手当とは
  • 受給資格決定後に病気やケガで引き続き15日以上仕事に就けないときに支給
  • 基本手当は支給されず同額の傷病手当が支給される
  • 14日以内の病気やケガの場合は基本手当が支給
  • 傷病手当金や休業補償給付が支給される場合は傷病手当は支給なし
  • ハローワークに傷病手当支給申請書を提出

離職して雇用保険の受給手続きをした方は、失業認定を受けると基本手当が支給されます。

失業認定には求職活動をしていることが条件ですので、病気やケガのために求職活動できないと基本手当の支給は受けられません。

そのため15日以上求職活動ができない場合には、生活の安定を図るために、基本手当と同額の傷病手当が支給されるようになります。

14日以内の病気やケガについては、基本手当が支給されます。30日以上引き続き仕事に就けないときには、基本手当の受給期間を最大4年間まで延長できます。

ハローワークの雇用保険・失業保険については、別ページで詳しくご説明しています。

病気やケガで働けなくなり、収入がない方は生活に困ってしまいます。業務上の病気やケガは労働基準監督署に申請して休業補償給付を受けましょう。業務外の場合は、健康保険に申請して傷病手当金の支給を受けましょう。会社都合による休業は、労働基準法によって会社から休業手当が支給されることになっています。