奨学金は教育費にしか使えないので、交際費や遊興費に充てることはできません。※利用する奨学金によって使途や用途が異なる場合があります
日本学生支援機構の奨学金は、明確に使用用途が定められているわけではありませんが、授業料や制服代、教科書代、定期券代、修学旅行代などに使えます。
バレないからといって学費以外の遊びなどに使う人もいますが、そんな学生が後になって奨学金が返せなくて困るのです。
一定の条件を満たす貧困家庭には、給付型の奨学金制度もあります。企業の奨学金にも返さなくていい給付型奨学金があります。
日本学生支援機構の奨学金は貸与型と給付型があり、返す必要が無いものが「給付奨学金制度」です。
大学などへの進学を希望している優れた成績の学生が対象で、経済的な理由で進学が困難な場合に利用できる給付金制度です。
日本ではまだまだ貸与型給付金が一般的で、給付型の奨学金が利用できる人は限られています。
給付型奨学金の特徴
- 収入基準、学力基準、資産基準を満たした人が申し込みできる
- 貸与型給付金との併用が可能
- 申込時にマイナンバーで世帯の所得確認
- 奨学金は進学後に振込が始まる
- 毎月11日に奨学金が振込
- 毎年1回マイナンバーを利用して世帯の所得確認
- 毎年4月、7月、10月に在籍報告
- 給付奨学金の支給終了時に返還の要否を判定
給付型奨学金は2014年度から開始されましたが、2020年4月から新制度がスタートしました。住民税非課税世帯の学生は、給付型の奨学金を支給されると共に入学金や授業料の免除または減額が受けられます。
特に優れた人が経済的理由により修学が困難な場合に受けられるものなので、申込基準が厳しく、採用が決定されたあとも毎年の報告や認定が必要になります。
奨学金の使い道
日本学生支援機構の奨学金の資金使途(使い道)については、教育にかかる費用に限定されますが、具体的にどんな費用に使ってよいかは定義されていません。
使い道に制限がないからと言って何に使ってもよいわけではなく、遊びやギャンブルなどに使うことはできません。
給付型奨学金も同様に教育費にしか使うことができませんが、どこまで含めるかが議論されています。
- 授業料
- 制服代
- 通学カバン代
- 定期券代
- 教科書、文房具、教材費代
- 修学旅行代
- 部活動費、PTA会費、同窓会費
- (家賃、水道光熱費、食費)
どこまでが教育に関する費用なのかを判断するのは難しいですが、生活費については親からの仕送りやアルバイトで賄う学生が多いです。
ただ、どの費用をどこのお金から出したのかは調べようがないので、奨学金で受け取ったお金を生活費や遊びに使ってもわからないのが実情です。
貸与型なら貸付なので後で返ってきますが、給付型の場合、その人にあげてしまうわけですから、本当に教育費として使われたのかは、厳しく管理してほしいところです。
給付型奨学金を利用している人の割合
令和4年度のデータでは、大学へ通う人の半数以上が奨学金を利用していますが、給付型の奨学金を利用している人は16%ほどいます。
奨学金の利用 | 令和4年度 | 令和2年度 | 平成30年度 | 平成28年度 |
---|---|---|---|---|
給付型のみ | 9.1% | 5.2% | - | - |
給付+貸与 | 7.2% | 5.0% | - | - |
併用貸与 | 4.9% | 4.5% | 5.7% | 5.5% |
第一種のみ | 12.5% | 12.0% | 15.4% | 14.0% |
第二種のみ | 14.8% | 17.4% | 20.5% | 22.8% |
不採用 | 2.1% | 1.9% | 1.1% | 1.3% |
申請せず | 4.4% | 7.6% | 5.9% | 7.0% |
必要なし | 45.0% | 46.4% | 51.4% | 49.4% |
「給付型のみ」と「給付+貸与」の人が、日本学生支援機構の給付型奨学金を利用していることになります。併用貸与とは、無利子の第一種、有利子の第二種を併用している学生のことです。
給付型奨学金は利用条件が厳しいですが、利用している学生が全体の1割ほどなので、思ったよりは多い印象を受けます。ただし、最も多いのは有利子の第二種奨学金なので、給付型を受けるのは狭き門とも言えます。
奨学金を受給している人の割合
区分 | 令和4年度 | 令和2年度 | 平成30年度 | 平成28年度 |
---|---|---|---|---|
大学 | 55.0% | 49.6% | 47.5% | 48.9% |
短大 | 61.5% | 56.9% | 55.2% | 52.2% |
大学院(修士) | 51.0% | 49.5% | 48.0% | 51.8% |
大学院(博士) | 58.9% | 52.2% | 53.5% | 58.9% |
専門職学位 | 41.4% | 37.1% | 41.1% | 44.4% |
給付型と貸与型の奨学金を合わせると、55%の大学生が奨学金を利用して学校に通っています。
給付奨学金の申込基準
国の奨学金(日本学生支援機構の奨学金)や、国の教育ローン(日本政策金融公庫の教育一般貸付)があります。
貸与型の奨学金は、学生が債務者となり働き始めてから返済し、教育ローンは保護者が債務者となり返済します。
給付奨学金は返さなくていい奨学金ですが、申込基準が厳しくなっていて、収入や学力をチェックされます。
学校側が「人物・健康・家計・学力について基準を満たすことを確認し生徒を推薦」して、機構が「提出書類に基づき審査」して給付を決定します。
対象者は、収入基準及び資産基準のいずれにも該当する人です。
収入基準
収入基準は以下のようになっています。
第1区分 | あなたと生計維持者の市町村民税所得割が非課税であること (あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円未満であること) | |
第2区分 | あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上25,600円未満であること | |
第3区分 | あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が25,600円以上51,300円未満であること。 |
収入基準は世帯人数などで細かく分かれていますので、詳しくは「給付奨学金の家計基準」をご覧ください。
生活に困窮する世帯で、一定の要件を満たす優秀な生徒に対する奨学金なので、誰でも利用できるものではありません。
学力基準
給付型の奨学金を申込むときに気になるのが学力だと思いますが、学力基準があります。
- 高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること
- 将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること
これは進学前の予約採用を受ける際の学力基準です。進学後はまた別に学力基準があり、進学後に学力基準を満たしていないと奨学金が継続できません。
学力基準を満たしていないと廃止または警告になります。廃止または連続で警告となった場合は、奨学金の給付が停止されます。
進学前に条件を満たす学力があった人なら、普通に通っていれば満たせる基準だと思います。災害や傷病などの理由で学業に影響が出た時は廃止や警告にはなりません。
資産基準
生計維持者 | 基準額 |
---|---|
2人 | 2,000万円 |
1人 | 1,250万円 |
父母がいる場合は、原則として父母2名が生計維持者となります。
資産とは、現金や預貯金、有価証券、投資信託、投資用資産として保有する金・銀等の合計額のことです。
土地・建物等の不動産、貯蓄型の生命保険や学資保険は含まれません。
継続して給付金を受け取る流れ
給付金は1年毎に認定を受けて受け取るものです。
給付奨学金のQ&A
給付奨学金に関するQ&Aの中から、多くの方が疑問に思いそうな質問を掲載しておきます。
Q.申し込んだ後、給付奨学金を受けられるかどうか(審査結果)がわかるのはいつ頃ですか?
A.申し込む時期にもよりますが、提出いただく書類等に不備がなければ、来年度進学予定者については、年内に審査結果をお届けできる予定です。申し込む時期や提出書類の状況によっては、来年の 1 月下旬以降となる場合があります。
Q.高等学校等において、学習成績が5段階評価となっていない場合の学力基準はどうなりますか。
A.5段階評価に換算できる場合は換算するなどしたうえで、5段階評価の3.5に準ずる学習成績であるかどうかを確認します5段階に換算できない場合は、文部科学省作成の「学修意欲等の確認の手引き」に記載のとおり、平均水準以上(全体で中位以上)であることを確認します。
Q.学習成績が3.5未満の場合、高等学校等が面談等により学修意欲等を確認するとありますが、学修意欲の有無はどのような基準で判定されるのですか。
A.学修意欲等は、面談やレポートにより高等学校等が確認することになりますが、高等学校等は文部科学省で作成した「学修意欲等の確認の手引き」に記載の観点や方法により確認することになります。
給付奨学金の毎月の給付額
給付奨学金の毎月の給付額は、通う学校や区分によって変わります。
国公立
区分 | 自宅 | 自宅外 | |||
---|---|---|---|---|---|
大学 短大 専修 | 第1区分 | 29,200 (33,300) | 66,700 | ||
第2区分 | 19,500 (22,200) | 44,500 | |||
第3区分 | 9,800 (11,100) | 22,300 | |||
高専 | 第1区分 | 17,500 (25,800) | 34,200 | ||
第2区分 | 11,700 (17,200) | 22,800 | |||
第3区分 | 5,900 (8,600) | 11,400 |
私立
区分 | 自宅 | 自宅外 | |||
---|---|---|---|---|---|
大学 短大 専修 | 第1区分 | 38,300 (42,500) | 75,800 | ||
第2区分 | 25,600 (28,400) | 50,600 | |||
第3区分 | 12,800 (14,200) | 25,300 | |||
高専 | 第1区分 | 26,700 (35,000) | 43,300 | ||
第2区分 | 17,800 (23,400) | 28,900 | |||
第3区分 | 8,900 (11,700) | 14,500 |
生活保護世帯や、児童養護施設等から通学する人はカッコ内の金額が支給されます。
支給額は最大でも年数十万円なので、足りない分は自分で用意するか、貸与型の奨学金、教育ローンなどで補うことになります。貸与型奨学金との併用も可能です。
通信教育課程は、毎年5万円が給付され、社会的養護を必要とする人は、24万円の一時金が受け取れます。
住民税非課税世帯
区分 | 自宅 | 自宅外 | |||
---|---|---|---|---|---|
大学 短大 専修 | 国公立 | 29,200 (33,300) | 66,700 | ||
私立 | 38,300 (42,500) | 75,800 | |||
高専 | 国公立 | 17,500 (25,800) | 34,200 | ||
私立 | 26,700 (35,000) | 43,300 |
住民税非課税世帯(第1区分)の毎月の給付額は以下のようになっています。
生活保護世帯や、児童養護施設等から通学する人はカッコ内の金額が支給されます。
入学金・授業料の免除
給付型奨学金の対象者は、大学などに申し込むことで入学金や授業料の免除や減額を受けることができます。
進学先 | 国公立 | 私立 | ||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
短大 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
高専 | 8万円 | 23万円 | 13万円 | 70万円 |
専門 | 7万円 | 17万円 | 16万円 | 59万円 |
企業や大学の給付型奨学金
国の奨学給付金制度以外にも、企業や団体が、返済する必要がない給付型の奨学金制度を行っています。その企業や団体が指定する学校という条件が付く場合が多いです。
大学も日本学生支援機構の奨学金の他に、大学独自の奨学金制度を設けている事が多く、進学前や在学中に申し込めます。
企業の奨学金
企業の奨学金は利用条件が厳しいですが、「奨学金の返済義務がなく、将来の就職等についても義務が課せられない」ものが多いです。
大学の奨学金
多くの大学が独自の奨学金制度を設けています。給付型と貸与型の奨学金があり、成績優秀者は給付奨学金が利用できます。
新聞社の奨学金
新聞社の奨学金は、働きながら受け取る奨学金制度です。朝夕刊の配達、集金、チラシの折込などの業務をしつつ学校へ通います。
無料宿舎が用意されているので、お金に困っている家庭の子でも大学へ通うことができますが、仕事をしながら大学へ通うのは思っている以上に大変です。
奨学金は学生自身が返済するもの
貸与型の奨学金が返せずに苦労している社会人も多いですが、奨学金は学生自身が働き始めた後に自分で返していくものです。
保護者や親族が連帯保証人や保証人になるケースも多いですが、基本的には学生自身が返済します。
教育ローンは親が返済しますが奨学金は自分で返済します。貸与型の奨学金を利用する人は、将来自分で返していく覚悟を持って利用する必要があります。
みんなが大学へ行くから何となく自分も大学へ行くというような感じで奨学金を借りると後悔します。
大学へ行くのが当たり前の時代になっており、大学へ行ったからといって就職に有利になるとは限りません。
本当にやりたいことがあって大学へ行くのはいいと思いますが、働くのが嫌だから大学へ行くという人も多いと思います。
親が負担するにしろ奨学金を借りるにしろ、進学するためにはお金がかかるので、意義のある学生生活にしたいですね。