一般的には子供の教育資金は、学資保険や貯金、奨学金、教育ローンで用意するものです。子供が生まれた時からコツコツ貯めている人も多いと思います。
無利子や返済の必要がない奨学金はありますが、無利子の教育ローンはありません。
無利子で教育資金を借りたい人は、「給付型奨学金」か、公的融資の「教育支援資金」で借りることになります。
生活福祉資金の教育支援資金は、奨学金に似た融資制度です。厳しい収入基準はありますが、無利子で借りられます。
奨学金は給付型と貸与型の2種類あります。給付型奨学金は返済不要ですが、利用条件が厳しくなっています。
無利子で借りられる教育支援資金とは
教育資金を用意する方法として奨学金や教育ローンがありますが、自治体の公的融資である生活福祉資金貸付制度の中にも「教育支援資金」があります。
生活福祉資金貸付制度とは、所得の少ない世帯や障害者・高齢者を抱える世帯を支援する融資制度です。生活費や住居費などが借りられますが、子どもの教育資金も借りられます。
教育支援資金は申込条件が厳しいですが、原則として無利子で借りられるので、条件を満たしている世帯の方は検討してみてください。
子供の教育資金の借入先を検討するときは、公的融資⇒奨学金⇒教育ローンの順番で調べていきましょう。奨学金の中にも給付型や無利子のものがあります。
生活福祉資金貸付制度の支援資金
教育支援資金は、生活福祉資金貸付制度の中の1つの融資制度です。生活福祉資金貸付制度は、大きく4つの支援資金に分かれています。
総合支援資金 | 失業などの理由で日常生活を送るのが困難で、継続的な支援と貸付で自立が見込める世帯に対する貸付 |
福祉資金 | 技能修得や自営、住居の移転、出産、福祉用具の購入などに必要な経費を支払うための貸付 |
教育支援資金 | 子どもの教育(入学費・授業料など)に必要な資金を支払うための貸付 |
不動産担保型長期生活資金 | 高齢者に対し不動産を担保に生活資金の貸付を行う |
生活福祉資金は、世帯の自立を支援する制度です。貸付の対象は個人ではなく世帯です。世帯全体の状況によって融資が受けられるかが決まります。
生活福祉資金貸付制度の中で、子どもの教育資金として借入できるのが教育支援資金です。
生活福祉資金は、税金を原資とする公的な貸付制度なので、一般的な金融機関の融資よりも利用条件が厳しくなっています。
教育支援資金の特徴
- 無利子で借りられる
- 返済期間が長い
- 毎月の返済額が少ない
- 借受人は就学者本人
- 生活中心者が連帯借受人になる
教育支援資金は貸付なので借金ですが、無利子で借りられます。※返済期限を過ぎても返済が完了しない場合は年3%の利子が付きます。
奨学金と同様に就学者本人が債務者となり、学校を卒業した後に返済していきます。生活中心者が連帯して債務を負う連帯借受人となります。生活中心者とは、世帯の中で最も収入が多い人のことです。
連帯保証人は原則不要ですが、世帯の収入や負債などの状況によって連帯保証人が求められる場合があります。
教育支援資金の利子や返済期間
教育支援資金は、返済期間内の返済なら無利子です。返済期限を過ぎても返済が完了しない場合は年3%の延滞利子が発生します。
借入額 | 返済期間 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
50万円 | 14年 | 2,970円 |
100万円 | 14年 | 5,950円 |
150万円 | 14年 | 8,920円 |
200万円 | 14年 | 11,900円 |
250万円 | 14年 | 14,880円 |
300万円 | 14年 | 17,850円 |
350万円 | 14年 | 20,830円 |
400万円 | 14年 | 23,800円 |
学校を卒業し6ヶ月間の据置期間を経てから返済が始まります。毎月の返済額は、14年間遅れることなく無利子で返済した場合の返済額です。※返済の最終回は金額が異なります。
教育支援資金の種類
教育支援資金は、高等専門学校、大学(専門職大学、短期大学、専門職短期大学含む)、専修学校(高等課程・専門課程)へ進学する際の支援金です。
教育支援資金は、「教育支援費」「就学支度費」の2つの種類があり、教育支援費は授業料などの学費、就学支度費は入学にかかる費用の支払いに使います。
教育支援費 | 就学支度費 | |
---|---|---|
貸付限度額 | 下記参照 | 50万円 |
据置期間 | 卒業後6ヶ月 | 卒業後6ヶ月 |
償還期限 | 20年以内 | 20年以内 |
貸付利子 | 無利子 | 無利子 |
連帯借受人 | 必要 | 必要 |
連帯保証人 | 原則不要 | 原則不要 |
どちらの資金も連帯保証人は原則不要ですが、世帯で最も収入の多い方が連帯借受人となり、借受人と共に連帯して債務を負担する義務があります。
教育支援費で借りられる金額
学校 | 月額上限額 | 特に必要な場合 |
---|---|---|
高等学校 専修学校高等課程 | 35,000円 | 52,500円 |
高等専門学校 | 60,000円 | 90,000円 |
短期大学 専修学校専門課程 | 60,000円 | 90,000円 |
大学 | 65,000円 | 97,500円 |
教育支援費は月額の上限額が決められており、上限額の範囲内で必要な額が借りられます。実際の学費に応じた金額が基準になるので、必ず上限額まで借りられるわけではありません。
通常の貸付条件額では不足する場合には、上限額の1.5倍の金額まで借りられる可能性があります。1.5倍の金額を借りるには、申込者の就学に対する熱意や将来性などが求められます。
- 授業料
- 施設設備費
- 実習費
- 同窓会費
- 教科書代
- 制服や体操着等の費用
- PTA会費
- 修学旅行費
- 定期代(学割実額)
教育支援費の対象となる学費の具体的な内容はこのようになっています。通学する学校で必要になる費用なので、塾代や寮費などは対象になりません。
就学支度費で借りられる金額
学校 | 貸付上限額 |
---|---|
高等学校 専修学校高等課程 | 500,000円 |
高等専門学校 | |
短期大学 専修学校専門課程 | |
大学 |
就学支度費は、入学金に充てるための費用なので、入学する学校の入学金が50万円に満たない場合は、入学金の額が上限額になります。
対象となる入学金は、申込時に未払いであるものが対象となるため、すでに支払ってしまった入学金を補填するために就学支度費から借りることはできません。
教育支援資金の利用条件
教育支援資金の利用条件は、お住まいの地域によって異なります。詳しくは、お住まいの地域の社会福祉協議会にご相談ください。
- 世帯収入が収入基準を超えていない世帯
- 日常生活には困っていないが、修学のためのまとまった資金が用意できない
- 世帯収入で、学校卒業までの生計維持が可能な状況である
- 東京都内に住居があり、住民票の住所と現住所が同一である
- 社会福祉協議会が債権者である貸付制度の連帯保証人及び世帯員ではない
- 暴力団員である者が属する世帯ではない
- 卒業後の返済の意思を明確にしていただきます。また借受期間中、返済期間中に窓口となる社会福祉協議会及びお住まいの地域を担当する民生委員による支援を受けていただくこととなりますので、このことについても了解いただきます
- 神奈川県内に住んでいて、住民票もその住所にある世帯です
借り受けを希望する生徒・学生と、世帯の生計中心者が同じ住所に住んでいない場合は窓口でご相談ください - 世帯収入が基準以下の方(窓口でご確認ください)
- 借受希望者が未成年の場合は、親権者(保護監督責任者等) の合意が必要です
- 世帯収入が生活保護基準の概ね1.7倍以下の低所得世帯(地域・家族構成等で算出されます。詳しくはお住いの市町村社会福祉協議会へご相談ください)
- 大阪府内に居住されている世帯(居住地と住民票が一致していること)であること
- 「生活保護世帯」または、世帯の収入のある方全員が 府・市町村民税「非課税」「均等割課税」などの低所得者世帯(生活保護基準額の1.8倍以内)であること
- 外国籍の方の場合には、在留資格を持ち、将来とも永住が確実に見込まれること
- 兵庫県に居住中で、同一地域に6ヶ月以上居住しており、今後もその地域において継続して生活される世帯
- 低所得世帯(世帯の収入が市区町民税非課税程度、または生活保護基準の1.8倍程度の所得の世帯)
- 世帯内の学生の高等学校や大学等への進学・在学にあたり、その学費の捻出のため他からの融資を受けることが困難、または融資を受けても進学・在学が困難な世帯
教育支援資金は、まとまった額の貸付なので、融資が受けられるのは返済する能力がある世帯に限られます。
入学資金や学費を借りることで、学校卒業まで通い続けることが可能な世帯が対象で、教育支援資金で不足する分は自力で用意しなければなりません。
東京都では、すでに総合支援金や福祉金などの他の生活福祉資金貸付を受けている世帯は、教育支援資金の貸付は受けられません。
低所得者は生活保護の1.8倍が基準になっている自治体が多いです。
東京都の収入基準
東京都の教育支援資金を利用するための収入基準をご紹介します。
世帯人員 | 平均月収 |
---|---|
2人 | 272,000円 |
3人 | 335,000円 |
4人 | 385,000円 |
5人 | 425,000円 |
収入基準は毎年改定され、世帯の人数によっても異なります。世帯の収入額なので、働いている人が2人いれば2人分の収入を合わせた金額になります。
収入額から家賃や住宅ローンなど一部の費用は、一定金額を控除することができます。
生活福祉資金の中でも、生活支援費や住宅入居費などが受けられる低所得者の条件は、住民税の非課税対象になるくらい所得が少ない世帯です。
教育支援資金は、日常生活には困らない程度の収入があり、教育資金を用意するのが難しい世帯が対象なので、収入が少なすぎても多すぎても対象になりません。
借受人及び連帯借受人になれない方
東京都の教育支援資金を利用する際に、借受人や連帯借受人になれない方をご紹介します。
- 収入が少なく生活全般に困窮している方
- 多額の負債がある人または滞納している方
- 債務整理中またはその予定がある方
- 社会福祉協議会が債権者である貸付制度の連帯保証人及び世帯員の方
- 公務員(世帯内に公務員の方がいる場合も含む)
収入がないまたは少ない方で生活に困窮している方は返済能力がないと判断されるため教育支援資金が利用できません。多重債務や債務整理中の方も同様の理由で対象外です。
すでに社会福祉協議会の貸付制度を利用している方は、教育支援資金の借受人や連帯借受人にはなれません。
なぜだめのかはわかりませんが、公務員の方も利用できません。以前は公務員の記載はなかったのですが、2021年度のパンフレットには公務員の記載がありました。
負債がある場合
住宅ローンや自動車ローン、カードローンなど負債がある場合は、借入額や残債、月々の返済状況などが確認されます。※書類や通帳などで確認されます。
収入基準を満たしていても負債が多いと、返済能力がないと判断され貸付が受けられない可能性があります。
負債には、金融機関やクレジットカード会社からの借入、公的機関からの借入、水道光熱費や税金の滞納、家族や知人からの借金などが含まれます。
収入や負債などを偽って教育支援資金を利用した場合、一括返済を求められます。
虚偽の申請や不正な手段により資金を借りた場合、貸付金を即時に一括返済していただきます。
※教育支援資金のご案内(PDF)
教育支援資金の申込の流れ
教育支援資金を利用したい場合、まずは市区町村の社会福祉協議会に相談します。市区町村の社会福祉協議会に提出された書類を基に、都道府県の社会福祉協議会が審査を行います。
申込から融資実行までの流れは以下のようになります。融資までに時間がかかるので、余裕を持って申し込みましょう。
市区町村の社会福祉協議会に相談する
申込が適切と判断された場合は申込書類を用意する
民生委員が自宅を訪問し面接する
社会福祉協議会に借入申込書や必要書類を提出する
都道府県の社会福祉協議会が審査を行う
必要に応じて追加書類を提出する
審査結果の連絡を受ける
貸付が決まったら借用書を作成する
借受人、連帯借受人が署名・捺印する
必要に応じて連帯保証人や親権者もサインする
申込から1ヶ月ほどで資金が口座に振り込まれる
入金後に支払証明書を提出する
教育支援資金は、資金の使い道が子どもの教育資金に限られているため、資金交付後に借りたお金で支払いしたことを証明する書類(納付書、領収書など)を提出する必要があります。
複数年度に渡り借入を希望する場合は、分割して資金が交付されます。毎年、在学状況や世帯状況が確認され、場合によっては資金の交付が中止されます。
教育支援資金の必要書類
- 借入申込書
- 住民票の写し
- 借入申込者世帯の収入証明書
- 学校に関する書類(募集要項、合格通知書、在学証明書など)
教育支援資金の申込段階で必要になる書類です。審査に通った後に借用書や印鑑登録証が必要になります。
予約申込
教育支援資金は年間を通して申し込みを受け付けていますが、申込から融資までに1ヶ月ほどの期間が必要になります。
受験に合格してから申し込んだ場合、入学費や学費の納入期限に間に合わないため、予約申込として借入の申込ができます。
予約申込は学費の納入期限の2ヶ月前から申請できます。
- 貸付が行われるのは進学先が決まってから
- 1番早い納期、1番高い入学金・学費の学校に合わせて貸付が決まる
- 第2志望校の押さえの為の費用は借りられない
貸付決定後の流れ
審査に通り貸付が決定してもすぐに入金されるわけではありません。借用書を提出して書類に不備がなければ入金されます。
借用書に必要事項を記入し提出する
必要書類に不備がなければ貸付が行われる
単年度貸付は一括送金、複数年度貸付は分割送金
複数年に渡り貸付を受ける場合は
毎年4月と9月に世帯状況や在学(進級)を確認される
卒業後6ヶ月の据置期間を経て返済開始
貸付が決定すると借用書の提出が必要になります。借用書に署名捺印し、印鑑登録証明書を添付して提出します。
- 借受人
- 連帯借受人
- 親権者(借受人が未成年の場合。両親に親権があれば父母のどちらも。外国人の場合も必要です)
- 連帯保証人(設定している場合のみ)
借受人が未成年の場合は親権者の記載も必要になります。未成年の方は印鑑登録証明書の提出は不要です。
奨学金や教育ローンについて
教育支援資金は収入制限などがあるため利用できる人が限られていますが、奨学金や教育ローンは多くの人が利用できます。
奨学金は給付型と貸与型があり、給付型なら返済の必要がありません。貸与型も無利子と有利子があり、無利子なら教育支援資金と同様に利子はかかりません。
大学や大学院に通っている学生の半数は奨学金でお金を借りています。
区分 | 令和2年度 | 平成30年度 | 平成28年度 |
---|---|---|---|
大学 | 49.6% | 47.5% | 48.9% |
短大 | 56.9% | 55.2% | 52.2% |
大学院(修士) | 49.5% | 48.0% | 51.8% |
大学院(博士) | 52.2% | 53.5% | 58.9% |
専門職学位 | 37.1% | 41.1% | 44.4% |
給付型奨学金
金利 | - |
返済期間 | - |
申込方法 | 学校を通して申し込み |
申込条件 | 収入基準、資産基準、学力基準に合致する人 |
申込時期 | 進学前、在学中 |
運営元 | 日本学生支援機構 |
給付奨学金は低所得世帯の成績優秀者が利用できる奨学金制度です。
給付奨学金は返さなくよい奨学金ですが、成績によって適格認定時に警告や廃止になる可能性があります。
大学生の約1割が給付奨学金を受け取っています。(貸与奨学金との併用も含む)
貸与型奨学金
金利 | 無利子または年0.2~0.5% |
返済期間 | 最長15年 |
申込方法 | 学校を通して申し込み |
申込条件 | 学力基準、家系基準に合致する人 |
申込時期 | 進学前、在学中 |
運営元 | 日本学生支援機構 |
貸与奨学金は第一種と第二種があり、第一種は無利子ですが第二種は有利子です。利率は毎月変わりますが、教育ローンなどと比べると低金利です。
給付奨学金と貸与奨学金の併用も可能ですし、第一種と第二種の併用も可能です。奨学金の中で最も利用者が多いのは有利子の第二種奨学金です。
大学生の約3割が第一種または第二種の奨学金を受け取っています。国の教育ローンと呼ばれる日本政策金融公庫の教育一般貸付と併用している学生も多いです。