日本では幼児教育・保育の無償化、高校無償化、大学無償化など、無償になる制度があります。

無償化については一時期話題になったものの、当事者になってみないとわからないことだらけです。

我が家は長女の高校進学があり、今回初めて高校無償化(高等学校等就学支援金)の手続をすることになりました。

このページでは、幼児教育・保育の無償化、高校無償化、大学無償化の制度の内容と、対象者や利用条件、所得制限などについてご紹介します。

高校無償化(高等学校等就学支援制度)

国公立、私立の高校に通う方は、「高等学校等就学支援制度」によって国が授業料を支援してくれます。2020年4月から私立高校への支援が大幅に拡大され、私立高校授業料は実質無償化となりました。

この制度のポイント
  • 高等学校等就学支援制度
  • 国が高校の授業料を支援
  • 保護者の所得によって支給額が異なる
  • 年収目安910万円未満は基準額118,000円支給
  • 高校の費用全額が無償になるわけではない

こちらの制度の受給要件は、保護者の年収が大きく関係します。幼保無償化制度は所得関係なく無償ですが、高等学校等就学支援制度の場合は高所得の方は受給できません。

また、高校にかかる全ての費用が無償ではないので注意も必要です。

今年度長女が高校に進学し、高校から「高等学校等就学支援制度」の申請方法について案内がありました。支給対象となる年収の目安や申請方法をご説明します。

高校授業料無償化の目的

高校授業料無償化の目的は、保護者の経済的負担の軽減です。

本制度は、授業料に充てるための就学支援金を支給することにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の実質的な機会均等に寄与することを目的としています。

国公私立問わず、高等学校等に通う所得等要件を満たす世帯(※年収約910万円未満の世帯)の生徒に対して、授業料に充てるため、国において高等学校等就学支援金を支給します。

※引用元:文部科学省ホームページ

保護者の所得によって学ぶ環境が変わることのないように、教育費の支援をしてくれる制度です。高等学校等就学支援制度は、全国で約8割の生徒が利用しています。

支給対象者

対象となる方
  • 日本国内に住所のある方
  • 国公私立の高等学校(全日制、定時制、通信制)に在学する方

高等学校等就学支援制度の受給資格は、日本国内に住所があり、高校等(高専、高等専修学校等を含む)に在学する方です。

対象外となる方
  • 保護者の年収が約910万円以上の方
  • 高校等を卒業または修了した方
  • 高校等に在学した期間が36月を超えた方(留年した方)

高所得の方やすでに高校を卒業した方、留年して在学期間が延びた方は対象とはなりません。

支給額と年収目安

就学支援金の支給額は、世帯年収と保護者が共働きかそうでないか、子の人数や年齢等によって異なります。

※画像引用元:文部科学省高等学校等就学支援金

支給額は簡単に説明すると、公立高校が年間11万8,000円、私立高校の場合は加算があり39万6,000円となります。

学校種別 支給額
国公立高校 11万8,800円
国公立高等専門学校 上限23万4,600円
私立高校(通信制) 29万7,000円
私立高校(全日制) 39万6,000円

ただし、年収や家族構成によって異なるため、年収590万円以上の方は、私立高校でも11万8,800円の支給になる場合があります。

両親共働きの場合(私立高校)

子の数 11万8,800円支給 39万6,000円支給
子1人(高校生) ~約1030万円 ~約660万円
子2人(高校生・中学生以下) ~約1030万円 ~約660万円
子2人(高校生・高校生) ~約1070万円 ~約720万円
子2人(大学生・高校生) ~約1090万円 ~約740万円
子3人(大学生・高校生・中学生以下) ~約1090万円 ~約740万円

※引用元:文部科学省就学支援金年収目安

両親のうち一方が働いている場合(私立高校)

子の数 11万8,800円支給 39万6,000円支給
子1人(高校生) ~約910万円 ~約590万円
子2人(高校生・中学生以下) ~約910万円 ~約590万円
子2人(大学生・高校生) ~約950万円 ~約640万円
子2人(高校生・高校生) ~約960万円 ~約650万円
子3人(大学生・高校生・中学生以下) ~約960万円 ~約650万円

※引用元:文部科学省就学支援金年収目安

所得判定基準の計算式は、「市町村民税所得割の課税標準額✕6%-市町村民税の調整控除の額」なんだそうです。

※画像引用元:文部科学省所得判定基準

上の画像を見ても、よくわからないという方が多いと思います。

対象となるかどうか微妙な場合でも、とりあえず申請して審査結果を待つ形にすることをおすすめします。高等学校等就学支援金は、全ての高校生が申請して、その後審査で対象となるかならないかが決まります。

申請方法

高等学校等就学支援制度を利用するには申請が必要です。学校から必要書類が配布され、指定する期日までに学校へ提出します。

高校無償化の申請
  • 申請が必要(書類申請、オンライン申請)
  • 入学時または入学前に学校から案内される
  • 必要書類を期日までに提出する
  • 7月頃申請の結果がわかる

文部科学省のホームページでは、入学時の4月に学校から案内があると記載されていますが、入学前に案内される学校が多いです。

私の長女の学校の場合は、入学前に行われた入学説明会で関係書類を渡されました。書類申請の場合は入学式の日に提出して、オンライン申請の場合は入学式から一週間後ぐらいの期日までに手続します。

申請には保護者のマイナンバーカードまたはマイナンバーがわかるものが必要です。

マイナンバーから住民税の課税情報や収入情報が連携しているので、無償化の対象となるかならないかを判断します。

  • マイナンバーカードの写し
  • マイナンバーが記載された住民票
  • 住民票記載事項証明書

マイナンバーカードがない場合には、マイナンバーが記載された住民票でも大丈夫です。

申請書類に必要事項を記入して、マイナンバーカードの写し等を添付して学校へ提出します。

オンライン申請の手続

高等学校等就学支援金のオンライン申請は、「e-Shien」という専用サイトで手続します。セキュリティの関係上、検索ワードで検索できないようになっているので、配布された手紙のQRコードを読み取るか、URLを入力して手続しましょう。

オンライン申請の場合は、学校から配布されるIDとパスワードが必要です。高校入学後にオンライン申請用のID・パスワードが個別に配布されます。

手続の流れ
  1. 学校から配布されたID・パスワードを入力
  2. 支給を希望するかしないかを選択
  3. 生徒情報の確認
  4. 保護者情報の入力
  5. 収入状況の登録

オンライン申請は、生徒の住所や保護者氏名、住所、マイナンバー等を入力します。

保護者が2名いる場合には、2名の情報を入力します。

全て入力できたら申請手続は完了です。結果は7月頃で、e-Shienのマイページで審査結果がわかるようになっています。

審査状況が気になったので、7月15日にマイページを確認してみました。まだ審査中でした。

オンライン申請の場合は、原則書類の提出が不要となっています。

入学時に支給対象外となった場合でも、状況がかわって支給基準を満たした場合には、支給を受けることができます。

保護者の電話番号の入力は任意となっていますが、電話番号はしっかり入力することをおすすめします。

確認事項があった場合に、電話で連絡が取れればそのまま審査に移り、電話番号の入力がない場合には、確認を取るのに時間がかかるため審査にも時間がかかってしまいます。学校側からは「電話番号は任意だが入力するように」との案内がありました。

授業料は学校が生徒に変わって受け取る

授業料無償化の給付金は、生徒や保護者の元に給付されるわけではありません。就学支援金は学校が生徒に変わって受け取ります。

  • 授業料は学校が受け取る
  • 先に授業料納付が必要な学校は後で差額分を還付する

学校は国から受け取った就学支援金と授業料を相殺し、授業料以外の費用を徴収する形になります。

ただし学校によっては、先に授業料の全額納付が必要としている場合もあり、その場合は就学支援金の対象者に後から差額分を還付する方法をとっています。

都道府県による就学支援制度

国の就学支援金の他に、都道府県で支援をしている場合もあります。

例えば埼玉県では、「埼玉県私立高等学校等父母負担軽減事業補助金制度」という県独自の制度があり、授業料、施設費等納付金、入学金を補助してくれます。

※画像引用元:埼玉県ホームページ

この制度では、国の支援金に上乗せして補助金が出ます。所得に応じで支給額は異なりますが、生活保護世帯や家計急変世帯は、入学金の他に施設費等納付金を全額補助してもらえます。

年収約590万円以上の世帯の場合、国の支援では118,800円の支援ですが、埼玉県では259,200円の補助があり、さらに入学金も10万円支給されます。

このような補助金や就学支援金がある都道府県は多いので、ホームページ等検索してみることをおすすめします。

ちなみにですが、都道府県で手厚い補助金や就学支援金がある場合には、私立高校の説明会で「〇〇県には補助金制度があるので私立でも安心して通えます!」等の案内があります。

その他の就学支援

高校生等奨学給付金

  • 都道府県実施の給付金
  • 生活保護世帯、年収約270万円未満世帯が対象
  • 授業料以外の教科書費や教材費などを支援
  • 給付金は約3~15万円
  • 高等学校等就学支援金と両方利用可

高校生等奨学給付金は国から補助を受けて都道府県が実施する給付金です。

詳しく知りたい方は、文部科学省ホームページの「高校生等奨学給付金の問い合わせ先一覧」をご覧ください。

市町村の奨学金

  • 市町村が独自に行っている奨学金
  • 給付型と貸与型がある
  • 所得基準がある場合がほとんど
  • 入学準備費、学用品費、通学費等を助成

市町村独自で奨学金制度を行っているところもあります。この奨学金は、給付型奨学金や貸与型奨学金などがあり、給付額も様々です。

多くの奨学金は所得制限があり、生活保護世帯や住民税非課税世帯、家計急変世帯が対象となっていますが、中には福岡県芦屋町のように所得制限がなく通学費を補助してくれる町もあります。

芦屋町は町内に居住する高校生等が公共交通機関を利用して通学する場合に、保護者の負担軽減を目的に補助を行っています。

※引用元:芦屋町ホームページ

芦屋町では、18歳になる年度末までの高校生を対象に、定期券購入額の2分の1、または2万円を補助してくれるようです。

住んでいる市町村のホームページや市役所・役場等で確認して、自治体独自の補助や給付がないかどうか調べてみることをおすすめします。

我が子は公立高校に進学しました。高校無償化で授業料は無料ですが、公立でもこんなに費用がかかるのだと驚きました。

入学にかかった費用、購入品、月々かかる費用、通学費など全ての費用を公開してますのでぜひ参考にしてみてください。

大学無償化(高等教育の修学支援新制度)

※画像引用元:文部科学省ホームページ

2020年4月から始まった「大学無償化」。正式には「高等教育の修学支援新制度」と言います。

大学無償化と聞くと全ての学生が無償で大学に行けるようなイメージを持つかもしれませんが、無償化の対象となるのはごく一部の学生です。

学ぶ意欲のある学生の授業料と入学金の免除または減額、給付型奨学金によって大学等の学費が無償化になる大学無償化制度をまとめてみました。

大学無償化のポイント
  • 授業料・入学金の減免、給付型奨学金で大学等を無償化
  • 文部科学省所管の日本学生支援機構の奨学金制度
  • 住民税非課税世帯の学生や住民税非課税世帯に準ずる学生が対象

大学無償化制度は、文部科学省所管の日本学生支援機構(通称JASSO)が運営しています。

日本学生支援機構には、以前から給付型奨学金と貸与型奨学金の制度がありましたが、従来の制度よりも支援の幅を大きくして、授業料・入学金の免除(または減額)、給付奨学金の拡大によって無償化になる制度にしました。

これが大学無償化と言われる「高等教育の修学支援新制度」です。

大学や専門学校等に無償で通えるなら大学無償化の制度をぜひ利用したいと思うかもしれませんが、実際に無償化の対象となるのは、特に厳しい経済的な理由のある学生です。

所得制限のない幼保無償化や年収約910万円以下で支援してもらえる高校無償化のように、多くの人が無償化の対象になるわけではありません。

大学無償化の目的

  • 低所得が理由で大学等へ進学できない人を減らし社会で活躍できる人材を増やす
  • 経済的負担を軽減して少子化対策になる

大学無償化(高等教育の無償化)の目的は、低所得世帯の方でも大学等へ行けるようにすることと、学費の経済的な負担を軽減して少子化対策につなげることです。

最終学歴によって平均賃金に差があり、また、低所得の家庭の子どもたちは大学への進学率が低いという実態がある。

※引用元:内閣府ホームページ

経済的な理由から大学進学を諦める方も多いです。これらのことから、低所得世帯でも大学無償化によって学べるようにし、教育の経済的な負担を軽減することが少子化対策につながるとしています。

支援の対象者

  • 住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生
  • 学ぶ意欲がある学生

大学無償化制度による支援の対象者は、住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生で、学ぶ意欲がある学生です。

学ぶ意欲は成績が評定平均が5段階で3.5以上あるか、3.5未満の場合には面談やレポート等の提出で意欲が確認できれば給付の対象となります。

年収目安

支援額は世帯年収や家族構成、家族の年齢によって異なります。参考までに、文部科学省のホームページに掲載されている年収の目安を紹介したいと思います。

家族構成【両親、本人(18歳)、中学生の家族4人】

支援対象 年収の目安 支援額
住民税非課税世帯 ~270万円 満額
住民税非課税世帯に準ずる ~300万円 満額の3分の2
住民税非課税世帯に準ずる ~380万円 満額の3分の1

家族構成【両親、本人(19~22歳、高校生の家族4人】

支援対象 年収の目安 支援額
住民税非課税世帯 ~300万円 満額
住民税非課税世帯に準ずる ~400万円 満額の3分の2
住民税非課税世帯に準ずる ~460万円 満額の3分の1

※引用元:文部科学省ホームページを元に作成

家族構成や家族の年齢によって違いますが、住民税非課税世帯の学生は、満額支給されます。

自分が対象となるか、どのくらい支援してもらえるか知りたい方は、日本学生支援機構の進学資金シミュレーターをご利用ください。

支援の金額

大学無償化の支給額は、住民税非課税世帯の学生は満額、住民税非課税世帯に準ずる学生は3分の2または3分の1となっています。

国公立 入学金 授業料
大学 約28万円 約54万円
短期大学 約17万円 約39万円
高等専門学校 約8万円 約23万円
専門学校 約7万円 約17万円
私立 入学金 授業料
大学 約26万円 約70万円
短期大学 約25万円 約62万円
高等専門学校 約13万円 約70万円
専門学校 約16万円 約59万円

入学金や授業料の減免の他に、給付型奨学金の給付もあります。(住民税非課税世帯の学生は満額、住民税非課税世帯に準ずる学生は3分の2または3分の1が支給されます。)

国公立 自宅通学月額 自宅外通学月額
大学
短期大学
専門学校
29,200円
(33,300円)
66,700円
高等専門学校 17,500円
(25,800円)
34,200円
私立 自宅通学月額 自宅外通学月額
大学
短期大学
専門学校
38,300円
(42,500円)
75,800円
高等専門学校 26,700円
(35,000)
43,300円

※()内の金額は生活保護世帯で自宅から通学する学生、児童養護施設等から通学する学生

大まかに計算すると、住民税非課税世帯の学生が私立大学へ進学する場合は、入学金約26万円、授業料約70万円、給付型奨学金月額38,300円✕12ヶ月で、合計141万9,600円支給されます。自宅外通学の場合には、合計186万9,600円支給となります。

大学無償化制度では、入学年度は最大約187万円が無償、2年目以降は最大約161万円が無償になります。

※画像引用元:日本学生支援機構ホームページ

日本学生支援機構のホームページに、イメージ図が掲載されていました。

年収が約270万円以下の住民税非課税世帯は授業料等減免と給付型奨学金の満額で約161万円支給され、その他の住民税非課税世帯に準ずる学生は3分の2または3分の1が支給されます。入学初年度には、上記金額に加えて入学金も支給されます。

文部科学省によると、私立大学の初年度納付金は約136万円です。医学部や歯学部など高額な費用がかかる学部もありますが、私立大学の文系学部なら無償化の給付金で間に合うと思います。

大学の学費について詳しく知りたい方は、別ページに載せています。

大学入学にかかる費用、4年間の学費の総額、国立と私立の学費の差、医学部、歯学部、薬学部、美大の学費について詳細をまとめていますのでぜひご覧ください。

申請方法

大学無償化制度(日本学生支援機構の奨学金)の申込は、学校を通じで行います。大学等に進学する前に申し込む「予約採用」と、進学後に申し込む「在学採用」があります。

予約採用
  • 高校3年の春に学校から手紙で案内
  • 申込時期は4~5月頃、6月頃、7月頃
  • 必要書類を受け取り申し込む

予約採用は高校3年生の春に募集が始まります。申込時期は学校によってスケジュールが異なりますが、1回目が4~5月で、2回目が6月頃、3回目が7月頃です。

奨学金の案内があったら期日内に学校に申し出て手続します。高3の春ではまだ進学するかどうかも決めていないかもしれませんが、予約採用の審査に通過した場合でも、学費が必要ない状況になった時には辞退することができます。

予約採用が決まっても、正式な手続は大学進学後です。進学先の大学で奨学金の説明会を受け、書類を提出してから給付となります。

在学採用
  • 進学後に在学先の奨学金窓口に申し出る
  • 募集は原則毎年春と秋

在学採用は、進学した大学や専門学校等の奨学金窓口で申請します。給付型奨学金の募集は毎年春と秋ですので、進学後に早めに窓口へ問い合わせて手続をしましょう。

奨学金の給付は入学後です。大学等に進学する場合には、入学前に入学金と前期授業料を納付します。奨学金を利用する場合でも、学校に納める費用は準備する必要があります。

入学金や前期授業料が用意できない場合には、日本政策金融公庫の教育ローン(国の教育ローン)での借入を検討すると良いと思います。国の教育ローンはいつでも申込できるので、進学を決めた時に申し込んでおくといいでしょう。

JASSOの奨学金、国の教育ローンについては、別ページに詳細を載せています。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

大学無償化の問題点

大学無償化には様々な意見があり、批判的な意見も多いです。無償化の予算が限られるため、対象を住民税非課税世帯など経済的にかなり厳しい世帯に限定した背景があります。

  • 大学無償化は完全に無料になるわけではない
  • 学費を捻出しようと収入を増やしたら所得制限を超えてしまった
  • 最大約187万円給付だから所得制限を超えないように働くようにした
  • 大学無償化の対象になるように低所得に見せかける世帯もある
  • すでに卒業した学生は対象外で不公平
  • 財源は消費税増税の増収分

大学無償化といっても実際には大学にかかる全ての費用が無料になるわけではないので、保護者が学費を工面しようと働く時間を増やしたら、無償化の所得制限を超えてしまい支給されなくなったという方もいます。

また、最大約187万円ものお金が給付されるので、必死に働くよりも収入を抑えてラクに働こうとする人もいるようです。

真面目に一生懸命働いている人は貸与型奨学金で借金して返済しなくてはならないのに、低所得世帯の学生は給付型で返済しなくてもいいなんて不公平だということも多く聞きます。

令和元年に日本学生支援機構の奨学金を利用した学生のうち、給付型奨学金は36,577人、貸与型第一種奨学金は568,171人、貸与型第二種奨学金は702,054人だったそうです。

多くの学生は貸与型で返済義務があるので、不公平感があるのも無理はありませんね。

幼児教育・保育の無償化

幼児教育・保育の無償化は、2019年10月1日から始まった制度です。幼保無償化や保育料無償化とも言われています。

幼児教育・保育の無償化
  • 幼稚園、保育所、認定こども園等の保育料の無償化
    ※幼稚園については月額上限25,700円
  • 3~5歳児クラスの全ての子どもが対象
  • 0~2歳は住民税非課税世帯が対象
  • 通園送迎費、給食費、行事費等は保護者負担

幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3~5歳児クラスの子ども(満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までの3年間)の利用料が無料になります。

0歳児クラスから2歳児クラスについては、住民税非課税世帯の子どもの利用料が無償となります。

無償化で保育料を負担しているのは、国、都道府県、市町村です。国が2分の1、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担しています。公立幼稚園・保育所、認定こども園については、市町村が10割負担しています。

無償化といっても全ての利用料が無料になるわけではありません。無償となるのは保育料が対象で、通園バスの送迎費や給食費、行事費等はこれまで通り保護者の負担です。

無償化の目的

幼保無償化の目的は、少子化対策です。子育て世代への負担軽減を目的として、幼児教育・保育の無償化が始まりました。

20代や30代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が最大の理由であり、教育費への支援を求める声が多い。子育てと仕事の両立や、子育てや教育にかかる費用の負担が重いことが、子育て世代への大きな負担となり、我が国の少子化問題の一因ともなっている。このため、保育の受け皿拡大を図りつつ、幼児教育の無償化をはじめとする負担軽減措置を講じることは、重要な少子化対策の一つである。

※引用元:内閣府資料

子育てや教育にかかるお金はものすごく多く、費用の負担を考えて子どもを持たない方もいますし、子どもを多く持たない方もいます。

幼稚園や保育所の保育料を無償化にすることで、費用の負担軽減となり少子化対策になる、少子高齢化対策になると国が決めました。

対象となる子ども

無償化の対象となるのは、3~5歳児クラスの全ての子どもです。所得制限はありません。

年齢等 対象となる子ども
3~5歳児クラス すべての子ども
0~2歳児クラス 住民税非課税世帯の子ども

0~2歳児クラスの子どもは、住民税非課税世帯の子どもが無償化の対象です。

幼保無償化は所得制限なく無償になる制度ですが、高校無償化や大学無償化は所得制限があるので注意しましょう。

無償化の対象・対象外となる費用

幼児教育・保育の無償化で無償となるのは、入園料や保育料です。

無償化の対象
  • 入園料
  • 保育料

入園料については、入園した年度に月額に換算して給付されます。

例えば私立幼稚園に入園したとして計算してみます。(例:入園料60,000円、月額保育料23,500円)

  • 入園料が60,000円の場合は「60,000円÷12ヶ月=5,000円」
  • 保育料月額23,500円の場合は「23,500円+5,000円=28,500円」が毎月の利用料
  • 利用料28,500円-月額25,700円(幼稚園無償化分)=2,800円が自己負担

このように、入園料は月額に割って利用料と合わせて計算します。

入園料と月額保育料が無償化の対象となるわけですが、幼稚園の場合は月額25,700円までが無償ですので、25,700円を超えた分は自己負担となります。

幼保無償化制度では入園料も対象になっていますが、私立幼稚園に入園の場合には、保育料が25,700円を超えることが多いです。そのため入園料は自己負担になります。(保育園・幼稚園で入園にかかる費用

また、入園料と保育料以外にかかる費用は無償化の対象外です。

無償化の対象外
  • 給食費(主食、副食)
  • 延長保育料
  • 通園バス費
  • 行事費
  • 文房具費
  • 制服代

入園料は無償化の対象ですが、制服代や入園時に購入するクレヨンやハサミ等の文房具は無償となりません。

園バスを利用して通園する場合には、自己負担となります。遠足やお泊り保育等で出かける時に集金される費用も自己負担です。

給食費については保護者負担です。年収360万円未満の世帯や第3子以降の子どもは、副食費が全額免除となります。

副食費は保護者負担となっていますが、地域によって副食費を助成してくれるところもあります。

副食費は国の無償化の対象外となることから、能代市では、子育て世帯の負担軽減策として、保育料の無償化の開始にあわせて副食費の全額助成を行います。

※引用元:能代市ホームページ

平内町では、3~5歳児の幼稚園・保育所・認定こども園を利用する子どもの副食費を無償化します!!

給食費の負担がなるのはありがたいことですね。子育てしやすい地域への引越を考えている方は、上記のように地域の助成を調べてみると良いと思います。

対象となる施設と無償化の内容

無償化の対象となる施設は、大きくわけると5つです。

対象となる施設
  1. 幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育
  2. 企業主導型保育事業
  3. 幼稚園の預かり保育
  4. 認可外保育施設等
  5. 就学前の障がい児の発達支援

施設や事業ごとに無償化の対象となる子どもや無償化の内容が決まっていますので、細かく見ていきましょう。

幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育

対象の子ども 無償化の内容
3~5歳児クラス 毎月の利用料が無償。幼稚園は月額25,700円。入園料は入園した年度に月額割を加算。
0~2歳児クラス 住民税非課税世帯。毎月の利用料が無償。

企業主導型保育事業

企業主導型保育で無償化の制度を利用する場合には、保育施設に必要書類の提出をします。

対象の子ども 無償化の内容
3~5歳児クラス 保育の必要性のある子ども。標準的な利用料が無償。
0~2歳児クラス 住民税非課税世帯。標準的な利用料が無償。

「保育の必要性のある子ども」とは、以下を指しています。

保育の必要性のある子ども

  • 従業員枠を利用している子ども
  • 地域枠を利用している場合は市町村の保育認定(2号、3号)の子ども

「保育認定2号または3号」とは、保護者の仕事や妊娠・出産、病気等で保育を必要とする子どものことです。

保育認定2号・3号

  • 就労(フルタイム、パート、夜間、自営業等)
  • 妊娠、出産
  • 保護者の疾病、障がい
  • 同居している親族の常時介護・看護
  • 災害復旧
  • 就職活動(起業活動を含む)
  • 就学(職業訓練校の就業訓練を含む)
  • 虐待やDVのおそれがある
  • 育児休業取得中にすでに保育を利用している子どもがいて継続利用が必要
  • その他、上記に類する状態として市町村が認める場合

就労形態によって、保育時間が決まっています。

就労 保育時間
フルタイム 11時間
パート 8時間

1ヶ月120時間以上のフルタイムの仕事をしている場合には、保育標準時間の11時間を利用できます。1ヶ月48~120時間未満のパートの方は、保育短時間の8時間を利用できます。

企業主導型保育の無償化の内容は、標準的な利用料が無償となっています。標準的な利用料とは以下の通りです。

年齢 標準的な利用料
4歳児 23,100円
3歳児 26,600円
1,2歳児 37,000円
0歳児 37,100円

標準的な利用料よりも多くかかった部分については自己負担となります。

幼稚園の預かり保育

幼稚園の預かり保育も無償化の対象となっていますが、住まいの市町村から保育の必要性の認定を受けることが必要です。

対象の子ども 無償化の内容
3~5歳児クラス 保育の必要性のある子ども。利用日数に応じて月額11,300円まで無償。

預かり保育の場合は、月額11,300円まで無償です。

「1日あたり450円✕利用日数」と預かり保育の利用料を比較して、少ない額(最大11,300円まで)が無償となっています。

預かり保育の利用料が11,300円を上回った場合には、超過分が実費負担となります。

認可外保育施設等

認可外保育施設等で無償化の対象となるには、住まいの市町村から保育の必要性の認定を受けることが必要です。また、保育所や認定こども園に申込して落ちてしまった方が対象です。

対象の子ども 無償化の内容
3~5歳児クラス 月額37,000円までの利用料が無償。
0~2歳児クラス 住民税非課税世帯。月額42,000円までの利用料が無償。

一般的な認可外保育施設の他に、ベビーシッターやファミリー・サポート・センター事業等も無償化の対象となっています。

対象施設・事業

  • 一般的な認可外保育施設
  • 地方自治体独自の認証保育施設
  • ベビーシッター
  • 認可外の事業所内保育
  • 一時預かり事業
  • 病児保育事業
  • ファミリー・サポート・センター事業

上記の施設や事業は、利用した時に一旦利用料の支払いが必要です。その後、園を通じてまたは自治体に直接申請して、無償化対象利用料が後日還付されます。

就学前の障がい児の発達支援

小学校入学前の障がい児発達支援等を利用している子どもは、毎月の利用料が無償となります。

対象の子ども 無償化の対象
満3歳以降の4月1日から就学までの3年間 利用料が無償。

幼稚園・保育所・認定こども園等に通園している方は、両方とも無償です。

無償化の対象となる施設

  • 児童発達支援
  • 医療型児童発達支援
  • 居宅訪問型児童発達支援
  • 保育所等訪問支援
  • 福祉型障がい児入所施設
  • 医療型障がい児入所施設

この無償化は申請等の手続はありません。支援や施設を利用する際に、無償化対象であることを確認してから利用しましょう。

幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児クラスの子どもが対象で所得制限がなく利用できる制度です。(0~2歳児クラスは住民税非課税世帯が対象です。)高校無償化は、年収約910万円の人が対象で、所得に応じて支援額が異なります。大学無償化は、住民税非課税世帯または住民税非課税世帯に準ずる世帯が対象です。