母子家庭で生活がギリギリ…、コロナで仕事が減り収入が減少…、子どもの進学費用が用意できない…母子家庭のお母さんだけでなく父子家庭のお父さんも同じように悩みがあると思います。

厚生労働省の調査によると、母子家庭の平均年収は243万円、父子家庭の平均年収は420万円だそうです。(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果)

長引くコロナの影響で、現在ではもっと年収が低くなっていることが予想されます。

そんなシングルマザー、シングルファザーの方に借入先として考えてほしいのは、国が無利息(または低金利)で貸付してくれる「母子父子寡婦福祉資金貸付金」制度です。

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度とは

母子父子寡婦福祉資金貸付金とは、母子家庭や父子家庭、寡婦の方が経済的自立を図るために必要な資金を国が貸付する制度です。

寡婦(かふ)は聞き慣れない言葉かもしれませんが、かつて母子家庭の母だった方のことです。

  • 母子福祉資金
  • 父子福祉資金
  • 寡婦福祉資金

非常に長い名称の制度ですが、上記3つの資金が合わさって「母子父子寡婦福祉資金貸付」と呼びます。

母子父子寡婦福祉資金貸付のポイント
  • 母子家庭、父子家庭、寡婦の方に貸付する制度
  • 生活資金、住宅資金、修学資金、事業開始資金等の貸付
  • 無利息(または低金利)で貸付

この母子父子寡婦福祉資金では、母子家庭、父子家庭、そしてかつて母子家庭の母だった方に、生活資金や学費、医療費、事業を開始するための資金等を貸付して支援してくれます。

また、母子・父子福祉団体への貸付も行っています。

利用できる方

母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用できる方は以下の通りです。(※児童とは20歳未満の子を指します。)

チェック
  • 母子家庭の母(20歳未満の児童を扶養している方)
  • 父子家庭の父(20歳未満の児童を扶養している方)
  • 寡婦(かつて母子家庭の母だった方)
  • 40歳以上の配偶者のいない女子

【就学支援資金・修学資金・就職支度資金・修業資金】

  • 母子家庭の児童
  • 父子家庭の児童
  • 寡婦が扶養する子
  • 父母のいない児童

資金の種類によって利用できる方は多少違いますが、基本的には母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦、母子・父子家庭の子、父母のいない20歳未満の児童が貸付を受けられます。

母子家庭・父子家庭

母子家庭・父子家庭の場合は、下記のいずれかに該当する方が対象です。

  • 配偶者が死別し現在結婚していない方
  • 離婚した方で現在結婚していない方
  • 配偶者の生死が不明な方
  • 配偶者から遺棄されている方
  • 配偶者が外国にいて扶養を受けられない方
  • 配偶者が精神障害や身体障害により長期に渡って働けない方
  • 婚姻によらないで母または父となった方で現在結婚していない方

該当する場合には、資金の借入先として一番に考えたいのが母子父子寡婦福祉資金です。

利用条件

経済的に困窮していてなおかつ将来必ず返済する意思のある方

母子父子寡婦福祉資金は、母子家庭、父子家庭、寡婦の方の経済的な自立を支援するものです。

それからこの制度は「給付」ではなく「貸付」です。返済する意思や能力があると認められなければ貸付はされません。

最低限の生活が維持できていることは大前提で、その上で子の学費が必要、医療費が必要などといった状況で貸付されるものとなっています。

貸付ではなく支給を希望する方は、「児童扶養手当(母子手当、父子手当)」の手続をしましょう。

貸付対象外となる人

  • 所得が一定額を超える方
  • 自力で資金の捻出が可能な方
  • 高齢の方
  • 日本学生支援機構の奨学金国の教育ローン等を借りている方
  • 他の借入金、税金、公共料金等を滞納している方
  • 自己破産の申立や特定調停、民事再生手続をしている方

母子父子寡婦福祉資金貸付は、本当に必要な方への貸付を目的としています。所得が一定額以上ある方や自分でどうにかなるような状況の方は、貸付の対象になりません。

この制度は貸付ですので、返済能力がなければ貸付されません。税金や公共料金の滞納、他の借入金の滞納がある方、高齢で返済能力に問題がある方は、利用対象外となります。

母子父子寡婦福祉資金は、母子家庭だから、父子家庭だから、寡婦だからという理由だけで利用できるものではなく、ひとり親家庭でなおかつ困窮している家庭が受けられる支援となっています。

利子・保証人

無利子または年1.0%
(連帯保証人を立てる場合は無利子、
立てない場合は年1.0%)

母子父子寡婦福祉資金の利子は、連帯保証人を立てる場合は無利子、連帯保証人を立ていない場合には年利1.0%です。

就学支度資金、修学資金、修業資金については、無利子となっています。

参考までに、公的貸付制度の利子をいくつか比較してみます。

公的貸付の種類 利子
母子父子寡婦福祉資金貸付金 無利子または1.0%
生活福祉貸付金 無利子または1.5%
日本学生支援機構 第一種奨学金は無利子、第二種奨学金は上限年利3%
国の教育ローン 年1.80%(令和4年5月現在)

公的な貸付制度は非常に低い金利で貸付してくれますが、中でも母子父子寡婦福祉資金貸付は、連帯保証人を立てない場合で1.0%と低金利で貸付となっています。

銀行や消費者金融のカードローンの金利を参考に載せます。

金融機関名 金利(令和4年7月現在)
三井住友銀行カードローン 年1.5~14.5%
三菱UFJ銀行カードローン 年1.8~14.6%
みずほ銀行カードローン 年2.0~14.0%
アコム 年3.0~18.0%
プロミス 年4.5~17.8%
アイフル 年3.0~18.0%

使い道を限定して銀行から教育ローンを借りる場合にはもう少し低い金利になりますが、それにしても母子父子寡婦福祉資金はものすごい低金利だということがわかります。

申請して貸付まで少し長い期間がかかりますが、まずは母子父子寡婦福祉資金からの借入を考えるのが一番です。

貸付金の種類

母子父子寡婦福祉資金には、12種類の貸付があります。

資金の種類 貸付限度額
①事業開始資金 303万円
②事業継続資金 152万円
③修学資金 私立高校 月額52,500円
私立大学 月額146,000円
④技能習得資金 月額 68,000円
⑤修業資金 月額 68,000円
⑥就職支度資金 100,000円
⑦医療介護資金 医療 340,000円
介護 500,000円
⑧生活資金 月額 105,000円
⑨住宅資金 1500,000円
⑩転宅資金 260,000円
⑪就学支度資金 私立高校 410,000円
私立大学等 580,000円
⑫結婚資金 300,000円

資金の種類によって利用できる方や貸付限度額が違います。詳しく見ていきましょう。

事業開始資金

事業開始資金は、事業を始めるために必要な設備や機械等を購入するための資金です。例えば飲食店、家事代行サービス、ネイルサロン、ハンドメイド販売、ヨガ教室など新しく事業を始める時に必要な資金を借入できます。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦
  • 母子・父子福祉団体

事業開始資金が利用できるのは、母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦、その他母子福祉団体・父子福祉団体です。

貸付限度額

303万円(団体の場合は456万円)

貸付限度額は303万円までです。母子・父子福祉団体の場合には、456万円まで借入可能となっています。

事業継続資金

事業継続資金は、現在経営している事業を継続するために必要な資金です。商品や材料等を購入する運転資金の借入ができます。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦
  • 母子・父子福祉団体

利用できるのは、母子家庭の母、父子家庭の父、寡婦、その他母子・父子福祉団体です。

貸付限度額

152万円

貸付限度額は152万円です。個人でも団体でも152万円までの貸付となっています。

就職支度資金

就職支度資金は、就職するために必要なスーツや靴、通勤用の自動車などを購入するための資金です。

利用対象

  • 母子家庭の母または児童
  • 父子家庭の父または児童
  • 寡婦
  • 父母のない児童

貸付限度額

〈一般〉10万円
〈特別〉33万円

貸付限度額は10万円です。通勤のための車を購入する場合には、33万円まで借入できます。

医療介護資金

医療介護資金は、医療または介護を受けるために必要な資金です。自己負担金、交通費、施術代などの借入ができます。

利用対象

  • 母子家庭の母または児童
  • 父子家庭の父または児童
  • 寡婦

貸付限度額

〈医療〉34万円
(※所得税非課税世帯48万円)
〈介護〉50万円

貸付限度額は、医療資金が34万円で介護資金が50万円です。所得税非課税世帯の方が医療資金を借入する場合には48万円となっています。

医療介護資金の貸付は、医療または介護を受ける期間が1年以内と見込まれる場合に限られます。

技能習得資金

開業または就職に必要な知識技能を習得するために必要な資金です。例えば、ホームヘルパーや栄養士、保育士の資格取得、運転免許取得のための授業料等が借入できます。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦

貸付限度額

月額68,000円(5年以内)
〈運転免許〉46万円

貸付限度額は、知識技能を取得する期間中月額68,000円です。自動車運転免許を取得する場合は46万円となっています。

生活資金

知識技能を習得している期間、または医療・介護を受けている期間の生活を安定・継続するために必要な生活費です。母子家庭・父子家庭になって7年未満の方や失業中の方も利用できます。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦

貸付限度額

内容 貸付限度額
技能習得期間中 月額141,000円
上記以外 月額105,000円
生計中心者でない場合 月額70,000円
養育費取得のための裁判費用の場合 126万円

貸付限度額は、技能習得期間中が月額141,000円で、それ以外は月額105,000円です。

養育費取得のための裁判費用として借入する場合には、126万円(月額105,000円✕12ヵ月)となっています。

住宅資金

住宅資金は、住宅購入、補修、改築または増築するのに必要な資金です。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦

貸付限度額

150万円
〈災害等〉200万円

貸付限度額は150万円までで、災害や老朽等による増改築や住宅購入の場合には200万円までとなっています。

転宅資金

転宅資金とは、住居の引っ越しに必要な頭金や敷金、前家賃、運送代等です。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦

貸付限度額

26万円

転宅資金の貸付限度額は26万円です。

修学資金

修学資金は、高等学校、高等専門学校、短期大学、大学、大学院または専修学校に就学させるための必要な資金(授業料、施設費、通学費、食費、教科書代等)です。

利用対象

  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 寡婦が扶養する子
  • 父母のない児童

貸付限度額

【国公立の貸付月額】

学校種別 自宅 自宅外
高等学校 27,000円 34,500円
中等教育学校(後期課程) 27,000円 34,500円
専修学校(高等課程) 27,000円 34,500円
高等専門学校 31,500円 33,750円
専修学校(専門課程) 67,500円 78,000円
短期大学 67,500円 96,500円
大学 71,000円 108,500円

【私立の貸付月額】

学校種別 自宅 自宅外
高等学校 45,000円 52,500円
中等教育学校 45,000円 52,500円
専修学校(高等課程) 45,000円 52,500円
高等専門学校 48,000円 52,500円
専修学校(専門課程) 89,000円 126,500円
短期大学 93,500円 131,000円
大学 108,500円 146,000円

貸付限度額は、就学する学校の種別や自宅通学か自宅外通学かで違ってきます。また、前年所得が682万円を超える場合には貸付限度額が異なります。

修業資金

修業資金は、開業または就職するために必要な知識技能を習得するために必要な資金です。

利用対象

  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 寡婦が扶養する子
  • 父母のない児童

貸付限度額

月額68,000円
〈自動車免許〉46万円

貸付限度額は、月額68,000円で知識技能を習得する期間中5年以内となっています。自動車運転免許を習得する場合には46万円借入できます。

就学支度資金

就学支度資金は、小学校、中学校、高校、短期大学、大学、大学院等に入学するために必要な資金(受験料、入学金、制服代等)です。

利用対象

  • 母子家庭の母が扶養する児童
  • 父子家庭の父が扶養する児童
  • 寡婦が扶養する子
  • 父母のない児童

貸付限度額

自宅外通学の場合の貸付限度額は以下の通りです。

学校種別 貸付限度額
小学校 64,300円
中学校 81,000円
国公立高等学校等 160,000円
私立高校等 420,000円
国公立大学・短大・大学院等 420,000円
私立大学・短大等 590,000円

基本的には高校以降の貸付ですが、所得税非課税世帯については、小学校、中学校の貸付も受けられます。

結婚資金

結婚資金とは、結婚に必要な資金(挙式代、家具購入等)の貸付です。

利用対象

  • 母子家庭の母
  • 父子家庭の父
  • 寡婦

貸付限度額

30万円

結婚資金の貸付限度額は30万円です。

必要書類

母子父子寡婦福祉資金の申請には、以下の書類が必要です。

必要書類
  • 申請書
  • 世帯全体の住民票および戸籍謄本
  • 印鑑登録証明書(借受人・連帯借受人・連帯保証人)
  • 収入を証明する書類(源泉徴収票、課税証明書、給与明細等)
  • マイナンバーカードまたは個人番号通知カード
  • 連帯保証人の住民票および年収を証明する書類
  • 生活費収支内訳
  • その他資金の種類に応じた必要書類

その他、資金の種類や申込内容によって提出書類が変わってきます。

例えば修業資金の場合は、合格通知書や授業料の額がわかる書類、就職支度資金の場合には就職決定書の写し、通勤用の自動車を購入する場合には自動車購入費用の見積書などが必要になります。

必要な書類は申込窓口で相談する際に詳しく説明があります。

申請窓口

住まいの市区町村の福祉事務所や各市役所が窓口です。地域によって窓口や名称が違うので、インターネットで確認の上、電話で問い合わせてみることをおすすめします。

区市名 担当部署
千代田区 保健福祉生活支援課
港区 子ども家庭支援センター
新宿区 子ども家庭部子ども家庭課
世田谷区 世田谷総合支所保健福祉センター子ども家庭支援課
杉並区 杉並福祉事務所高円寺事務所
東村山市 健康福祉部自立相談課
東久留米市 子ども家庭科部児童青少年課

東京都の市区の一部を参考に載せましたが、上記のように窓口となっている場所や名称が違います。

「東京都 母子父子寡婦福祉資金貸付金」や「杉並区 母子父子寡婦福祉資金」などのワードで検索してみると、問い合わせ先が出てくるので事前に確認しましょう。

申請から貸付までの手続

申請から貸付までの手続の流れを紹介します。

手続の流れ
  1. 事前相談
  2. 申請(窓口)
  3. 審査
  4. 貸付決定
  5. 契約(借用手続)
  6. 資金交付

相談から貸付まで約3ヵ月かかることもありますので、早めの相談をおすすめします。

事前相談

母子父子寡婦福祉資金を利用するには、必ず事前相談が必要です。相談は予約が必要としているところもあるので、電話で確認してから行くようにしましょう。

  • 借受人および連帯借受人は面接が必要
  • 必要な資金の種類、金額等を相談
  • 家庭状況や経済的な状況などが聞かれる

申請者、連帯保証人、連帯借受人の面接があります。面接では貸付内容や返済計画などが確認されます。

申請(窓口)

相談にて資金の申請が適切と認められた場合に申請できます。

  • 窓口で申請書と添付書類を提出
  • 申請後に追加で書類の提出を求められることもある

必要書類を提出したら結果を待ちます。

審査

母子父子寡婦福祉資金の貸付を受けるには審査があります。

  • 申請書を元に貸付の必要性と返済能力を審査

審査の結果、貸付を受けられない場合もあります。

貸付決定(郵送)

申請後、貸付決定または不承認の通知があります。

  • 貸付決定または不承認の通知が送られてくる
  • 貸付決定の場合には借用手続へ

貸付決定通知書が届いた方は、続いて借用手続に移ります。

借用手続

借受人、連帯借受人、連帯保証人が自筆で署名し実印を押印した借用書を提出します。

  • 借用書や口座振替納入依頼書等を提出
  • 銀行等で償還のための口座振替手続

銀行等で返済のための口座振替の手続をします。返済は月々での支払が原則です。

資金交付

事前に申請した金融機関の口座に資金が交付されます。

  • 指定の口座に貸付金が振込
  • 月額となっている資金は分割で振込

申請時に決めた償還計画書通りに返済していきましょう。

母子父子寡婦福祉資金は、償還されたお金を主に財源として貸付を行っています。資金が必要な方が次に貸付を受けられるように、しっかり返済しましょう。

貸付までの期間

2~3ヶ月

母子父子寡婦福祉資金の貸付までの期間は2~3ヵ月かかると思っておきましょう。

東京都福祉保健局では、資金交付まで1ヵ月以上と説明しています。

申請を受けてから、資金を交付するまでは通常1ヵ月以上かかります。お早めに、まずはご相談ください。

※東京都福祉保健局「母子福祉資金・父子福祉資金の貸付け

千葉県の公式ホームページには、申請から支払まで2~3ヵ月程度かかると説明がありました。

申請から貸付の決定・支払まで、おおむね2~3ヵ月程度かかりますので、余裕を持ってご相談ください。

※引用元:千葉県公式ホームページ「母子・父子・寡婦福祉資金の貸付け

岐阜県の公式ホームページには、振込まで3ヵ月との説明がありました。

申請~貸付金振込におおよそ3ヵ月程かかりますので、相談はお早めにお願いします。

※引用元:岐阜県「母子父子寡婦福祉資金貸付金のごあんない

大分市の公式ホームページには、申請から貸付金の交付まで約2ヵ月と記載されていました。

この貸付金は、申請から貸付金の交付まで一定の日数(約2ヵ月)を要します。また、ご相談から申請に至るまでにも、必要書類が多岐にわたり日にちを要しますので、弾力的な資金計画を立て、お早めにご相談ください。

※引用元:大分市「母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度

公的制度による貸付は、申請から貸付まで非常に長い期間がかかります。手続を見ればわかると思いますが、何度もやり取りをしてすぐに審査結果が出るわけではありません。

銀行や消費者金融などで、即日審査、最短翌日融資などスピーディーな貸付を行うところもありますが、母子父子寡婦福祉資金は公的な貸付なので貸付決定までの期間が長いです。

母子父子寡婦福祉資金の利用件数

厚生労働省が母子福祉資金、父子福祉資金,寡婦福祉資金の令和元年度の利用状況を公表しています。

令和元年度貸付実績 貸付金 利用件数
母子福祉資金 154億8,526万円 26,153件
父子福祉資金 7億5,440万円 1,351件
寡婦福祉資金 3億1,841万円 449件

※引用元:厚生労働省子ども家庭局

圧倒的に利用者が多いのは母子福祉資金です。これは父子世帯よりも母子世帯の方が収入が低いことが関係しているのだと思います。

貸付の件数、金額の約9割が修学資金関係なんだそうです。裏を考えると、修学資金関係以外の資金の貸付は、申請がなかなか通らないのではないでしょうか。

利用件数が多いと感じるか少ないと感じるかはそれぞれですが、実際には審査が厳しく申請できず、必要な貸付がなかなか行われない家庭もあるように感じます。

参考までに、日本学生支援機構の奨学金を利用している方(平成28年度)は、無利子奨学金が47万4千人で有利子奨学金が84万4千人となっています。

日本学生支援機構 平成28年度利用者数
無利子奨学金 47万4千人
有利子奨学金 84万4千人

日本学生支援機構の奨学金は、新規利用者を含めた全ての人数となっているので比較が難しいですが、それにしても母子父子寡婦福祉資金の利用件数は少ないように感じます。

母子父子寡婦福祉資金利用者の口コミ

母子父子寡婦福祉資金に申請した方や、窓口に相談へ行った方の口コミをいくつか紹介します。(Yahoo!知恵袋発言小町を元にまとめました。)

  • 相談した日から振込まで3ヵ月かかった
  • 2回申請したが1回目は相談の時点で却下された
  • 市税を滞納しているから受付不可と言われた
  • 実家ぐらしだから認められないかもしれないと言われた
  • 事業開始資金の相談に行ったら貯金が少ないと門前払いされた
  • 面接は子どもと一緒に受けないとで子が家計の事情を知って心苦しい思いをさせた

経済的に困窮してできるだけ早く貸付を受けたいと思って窓口で相談したものの、貸付金の交付まで約3ヵ月かかったとのことです。

窓口で門前払いのような対応をされた方もいます。申請前の時点で受付て貰えず、申請すらできない状況の方もいるようです。窓口の職員の対応に悪い印象を受けた方もいます。

公的な資金の貸付は、本当に必要としている人の支援になる貸付が目的となっているため、特に厳しい審査が行われます。

また、経済的に困窮している方が利用対象となっていることから、返済する意思と能力が本当にあるのかどうかの確認で、担当職員の対応が厳しくなっているのかもしれません。

いずれにしても、この母子父子寡婦福祉資金は、ただ単に母子家庭だから、父子家庭だからという理由で貸付を受けられるものではないので理解しておきましょう。

審査落ちする人の特徴

母子父子寡婦福祉資金貸付制度の審査に落ちてしまう方の特徴をまとめてみました。

審査に落ちる可能性が高い人
  • 税金を滞納している
  • 収入がない、無職
  • 収入が少なすぎる(返済できない)
  • 収入が多い(他の金融機関から借入できる)
  • 実家暮らしで収入のある父母と同居している
  • ローンやクレジットカードの返済が遅れている

母子父子寡婦福祉資金貸付金は、経済的に困窮していて本当に貸付を必要としているか、返済能力はあるかが審査されます。

税金の滞納、クレジットカードの返済の遅れなどがあると、返済能力に問題があると判断され審査には通りません。

実家暮らしで収入のある父や母と同居している場合には、審査に落ちてしまう可能性があります。

無職で収入がない方は返済できないので審査に通りませんし、逆に収入が高すぎても他で借入できると判断され審査に通らなくなります。

償還免除と支払猶予

母子父子寡婦福祉資金は、特別な場合に限り返済が免除となったり、支払が猶予されることがあります。

この制度による福祉資金は、給付ではなくあくまでも貸付です。よほどのことがない限り免除や支払猶予されません。

償還免除

  • 借受人が死亡した場合
  • 精神又は身体の障害による場合

上記の事由が発生した場合には、償還が一部免除、または全額免除となります。

精神または身体の障害によって償還できなくなった場合の証明には、医師の診断書が必要です。

支払猶予

  • 新型コロナの影響で経済状況が苦しくなり支払期日に返済することが困難な場合
  • 災害、盗難、疾病、負傷その他やむを得ない事情によって支払期日に返済することが困難になった場合

母子父子寡婦福祉資金の貸付を受けた方が、新型コロナの影響で一時的に収入が減少し生活がひっ迫していると認められた場合には、償還金の支払を猶予することができます。猶予期間は1年以内です。

生活福祉資金と母子父子寡婦福祉資金

借入先として社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」の利用を考える方もいると思います。母子父子寡婦福祉資金とどちらがいいか悩む方もいるではないでしょうか。

ポイント
  • 母子父子寡婦福祉資金の利用が優先
  • 生活福祉資金は最後の砦

母子家庭、父子家庭、寡婦は、まず母子父子寡婦福祉資金貸付の利用が優先となります。

生活福祉資金は、他から貸付を受けられない方が利用できるものとなっています。最後の砦のようなものです。

仮に生活福祉資金貸付の貸付が決まってから母子父子寡婦福祉資金貸付の利用が決定した場合には、生活福祉資金貸付を途中で辞退する形になります。

ひとり親家庭の支援

母子家庭、父子家庭、寡婦の方は、母子父子寡婦福祉資金以外にも様々な公的支援を受けられます。

さいたま市が行っているひとり親家庭への支援の一部を紹介します。

さいたま市の支援一例 内容
児童扶養手当の支給 ひとり親家庭または親に一定以上の障害がある場合、月額10,180円~43,160円
JR通勤定期乗車券の割引制度 通勤定期乗車券が3割引
ひとり親家庭等医療費の支給 医療費の一部を支給
ひとり親家庭児童就学支度金の支給 ひとり親家庭または父母のいない児童を養育している方、児童1人につき10,000円
就学援助制度 学用品の購入や給食費の支払で困っている家庭に一部を援助
水道料金・下水道使用料の減額制度 水道料金・下水道使用料を減額または免除
保育所の優先入所 保育の必要性が高いことから保育指数を高く設定
放課後児童クラブの優先入所 ひとり親家庭は必要性が高いことから指数を高く設定
子育てヘルパーの派遣 保護者の在宅時にホームヘルパーを派遣して家事・育児援助
子どもショートステイ 保護者が病気や介護で一時的に子の養育が困難になった場合、乳児院や児童養護施設で一定期間預かり
ファミリー・サポート・センター 保育園や児童クラブへの送迎、保育開始前や終了後に預かり
学習支援教室 児童扶養手当を全額受給している世帯の中学生が対象、学習をサポート
ひとり親家庭のための就業支援講習会 パソコン講座、就職支援セミナー、医療事務講座
市営住宅抽選の優遇措置 母子世帯・父子世帯は当選確率が優遇
県営住宅抽選の優遇措置 母子世帯・父子世帯は当選確率が優遇
母子生活支援施設 事情のある母子家庭の母が児童と一緒に生活できる施設

支援の多くは所得制限が設けられています。生活に困窮しているひとり親家庭のための支援ですので、利用対象となる方、対象かどうかわからない方も、まずは問い合わせてみましょう。

住まいの地域によって名称は異なりますが、各都道府県、各市区町村で同じような支援制度があります。

申請手続は市区役所、町村役場、または福祉事務所など支援の種類によって違うので、ホームページ等で確認の上利用しましょう。

母子父子寡婦福祉資金貸付は母子家庭や父子家庭の強い味方ですが、審査が厳しく借りられない方も多いです。自治体の相談窓口でまずは相談してみて、審査に通らない場合には生活福祉資金貸付制度等の利用を考えましょう。