個人事業主は会社員と違うから退職金が貰えない…、取引先が倒産して資金難に陥ってしまった…そんな時の備えとして利用できる「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」を知っていますか?

ポイント
  • 【小規模企業共済】小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度
  • 【経営セーフティ共済】取引先の倒産時に必要な資金を借入できる中小企業倒産防止共済制度

小規模企業共済と経営セーフティ共済は、国が全額出資している中小機構が運営しているため、安心して利用できる制度です。

加入資格のある方は、掛け金を支払うことで退職金が貰えたり、取引先の倒産時に資金を借入できるようになります。

このページでは、節税対策にもなる「小規模企業共済」の基本や加入資格や申込方法などをご紹介します。

小規模企業共済とは

小規模企業共済制度とは、小規模企業の個人事業主または経営者のための退職金制度のようなものです。

ポイント
  • 小規模企業の個人事業主や経営者のための退職金制度
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営
  • 加入者は約153万人(令和3年3月末時点)

小規模企業共済は、国が全額出資している独立行政法人中小企業基盤整備機構(通称:中小機構)が運営しています。

「廃業時の生活安定や事業再建、社会保障の不備補充」のために昭和40年に始まった制度で、令和3年3月末時点で加入者は約153万人となっています。

ひとつは、小規模企業の経営者や個人事業主が廃業や退職の辞退に陥った際に、その後の生活を安定させたり、事業の再建に備えたりできるようにすること。

もうひとつは、小規模企業経営者や個人事業主は一般の労働者・従業員と比べ、社会保障や労働保険など各種制度の恩恵を受けることが少なかったため、そういった社会保障政策の不備を補充する機能を果たすことでした。

※引用元:独立行政法人中小企業基盤整備機構「沿革」より

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主のための退職金制度です。

小規模企業共済のメリット

小規模企業共済は、ただ単に退職金の備えができるだけでなく、3つのメリットがあります。

メリット
  1. 掛金は増減可能で高い節税効果がある
  2. 共済金の受取は一括・分割選べる
  3. 低金利の貸付制度が利用できる

退職金を用意できるからだけではなくお得があるため、たくさんの加入者がいます。

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

掛金は増減可能で高い節税効果がある

  • 掛金(月額)は1,000円から7万円までの範囲内で500円単位で増額・減額できる
  • 掛金は全額所得控除扱いになり高い節税になる

小規模企業共済の掛金は、1,000円から7万円までの500円単位で自由に増額・減額できます。(減額する場合には、一定の条件が必要です。)

掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得から控除できるので節税になります。

中小機構ホームページに、節税額が載っていました。

※画像引用元:中小機構「掛金の全額所得控除による節税額一覧表」

例えば400万円の所得があって毎月3万円の掛金をかけている場合には、109,500円の節税になります。所得が1,000万円で掛金7万円の場合には、367,000円の節税です。

具体的にどれぐらいの節税になるかは課税所得や掛金により違ってきますので、中小機構「小規模企業共済 加入シミュレーション」をご利用ください。

共済金の受取は一括・分割選べる

  • 共済金の受取は「一括」「分割」「一括と分割の併用」から選べる
  • 一括受取は退職所得扱い、分割受取は雑所得扱いで税制メリットがある

共済金には満期や満額がなく、退職時や廃業時に受け取ることができます。受取方法には「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3種類あります。

共済金の受取方法 税法上の扱い
一括で受け取る場合 退職所得扱い
分割で受け取る場合 公的年金等の雑所得扱い
一括・分割併用で受け取る場合 【一括】退職所得扱い
【分割】公的年金等の雑所得扱い
遺族が受け取る場合 みなし相続財産
65歳以上で任意解約や任意退任する場合 退職所得扱い
65歳未満で任意解約や任意退任する場合 一時所得扱い
12ヵ月以上の掛金未払で解約手当金を受け取る場合 一時所得扱い

共済金を一括で受け取る場合の所得区分は「退職所得」で、分割で受け取る場合は公的年金等の「雑所得」となり、事業所得に比べて税負担が軽減されるメリットがあります。

低金利の貸付制度が利用できる

  • 掛金の範囲内で貸付制度が利用できる
  • 低金利、即日貸付も可能
  • 担保・保証人不要

小規模企業共済の加入者は、掛金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で、事業資金などを借入できます。

貸付の内容は以下の通りです。

貸付制度 内容
一般貸付 事業資金
緊急経営安定貸付け 一時的な売上減少の事業資金
傷病災害時貸付け 傷病で入院した時や災害で被害を受けた時の貸付
福祉対応貸付け 契約者や同居する親族のための住宅改造・福祉機器購入等
創業転業時・新規事業展開等貸付け 新規開業・転業の事業資金
事業継承貸付け 事業用資産や株式等の取得資金
廃業準備貸付け 設備の処分費用や事業債務の精算など廃業準備の資金

貸付制度の金利は、一般貸付が年1.5%で、その他の貸付が年0.9%と低金利になっています。(2022年7月現在)

貸付制度 金利 借入限度額
一般貸付 1.5% 10万円~2,000万円
緊急経営安定貸付け 0.9% 50万円~1,000万円
傷病災害時貸付け 0.9% 50万円~1,000万円
福祉対応貸付け 0.9% 50万円~1,000万円
創業転業時・新規事業展開等貸付け 0.9% 50万円~1,000万円
事業継承貸付け 0.9% 50万円~1,000万円
廃業準備貸付け 0.9% 50万円~1,000万円

借入限度額は、掛金の7~9割となっていて、一般貸付は最高2,000万円まで、それ以外の貸付が最高1,000万円までです。

低金利で高額の借入が利用できますし、即日貸付も可能となっています。

日本政策金融公庫の一般貸付を借りる時には、融資まで約1ヵ月(貸付の種類によっては約3ヵ月)かかるので、即日貸付も可能としている小規模企業共済の貸付制度は非常に助かりますね。

小規模企業共済と経営セーフティ共済の違い

節税対策のために、小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入を考える方は多いと思います。どちらがいいか迷う方もいるでしょう。

小規模企業共済と経営セーフティ共済は、制度の目的が全く異なります。

比較項目 小規模企業共済 経営セーフティ共済
制度の目的 個人事業主等のための退職金 取引先倒産時の貸付
(無担保・無利息・無保証人)
掛金の取扱 個人の所得控除 損金または経費に算入
掛金 月1,000円~70,000円
(年間84万円まで)
月5,000円~20万円
(年間240万円まで)
掛金上限 上限なし 総額800万円まで
解約金の取扱 退職所得、雑所得、一時所得 益金または事業所得
注意点 加入期間が20年未満は元本割れ 加入期間が40ヵ月未満は元本割れ
貸付制度 無担保・無保証人
(年1.5%)
無担保・無保証人
(年0.9%)
節税効果 高い 課税の繰り延べ

小規模企業共済は積立式の退職金で、経営セーフティ共済は取引先が倒産した時に貸付を受けられる制度です。

どちらも解約時には積み立てた金額を受け取ることができますが、小規模企業共済で20年未満に任意解約した場合には元本割れするので注意が必要です。経営セーフティ共済の場合は、加入期間が40ヵ月未満の解約だと元本割れします。

小規模企業共済と経営セーフティ共済に加入していると、低金利での貸付制度を利用することができます。

節税効果があるのは小規模企業共済です。

経営セーフティ共済は「課税の繰り延べ」ですので、一時的な節税効果があっても、結果的には節税になっていません。また、解約のタイミングを間違えると、余分な税金を支払うことになるので注意が必要です。

  • 退職金など大きな支出がある時に解約する
  • 赤字になりそうな期に解約する

経営セーフティ共済を解約するタイミングは、上記のように税率が低くなる時です。

小規模企業共済の加入資格

小規模企業共済の加入資格は以下の通りです。

加入資格
  1. 常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主または会社役員
    ※商業・サービス業では5人以下
  2. 事業に従事する組合員が20人以下の企業組合、協業組合、農事組合法人の役員
  3. 常時使用する従業員数が5人以下の弁護士法人、税理士法人の社員
  4. 上記「1」の個人事業主の共同経営者
    ※個人事業主1人につき2人まで

加入資格は業種によって異なります。なお、家族従業員や共同経営者(2人まで)は常時使用する従業員に含まれません。

加入できない人

以下に該当する方は小規模企業共済に加入できません。

  • 共同経営者の要件を満たしていない配偶者
  • 協同組合、医療法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人、社団法人、財団法人、NPO法人の役員
  • アパート経営を兼業している給与所得者
  • 全日制高校生
  • 生命保険外務員
  • 商業登記簿謄本に役員登記されていない人
  • 中小企業退職金共済制度、建設業退職金共済制度、清酒製造業退職金共済制度、林業退職金共済制度の被共済者

例えば、一緒に事業をしている配偶者であっても、共同経営者の要件を満たしていない場合には加入できません。

生命保険外務員(生保レディ等)は個人事業主ですが、小規模企業共済には加入できません。

加入窓口

小規模企業共済の申込手続は、中小機構と業務委託契約をしている委託機関または金融機関で行います。

委託団体

  • 商工会
  • 商工会議所
  • 中小企業団体中央会
  • 事業協同組合
  • 青色申告会
  • 損害保険ジャパン株式会社
  • アクサ生命保険株式会社

代理店

  • 都市銀行
  • 信託銀行
  • 地方銀行
  • 第二地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 商工組合中央金庫
  • 農業協同組合(34都道府県)

※ゆうちょ銀行、農協の一部、労働金庫、新生銀行、あおぞら銀行、外資系銀行、ネット銀行では取扱していません。

近くの金融機関が代理店かどうか確認したい場合には、小規模企業共済の「加入窓口代理店一覧」をご覧ください。

加入手続の流れ

小規模企業共済の加入手続は、加入する窓口によって少し異なりますが大まかな流れは以下の通りです。

1.中小機構に資料請求
中小機構に資料請求して契約申込書を入手する

2.必要書類を用意
必要書類を入手する

3.窓口に提出
業務委託団体または金融機関の窓口に提出する

4.中小機構から書類が届く
「小規模企業共済手帳」と「小規模企業共済制度加入者のしおり」が届く

加入手続きには、中小機構の所定の書類(契約申込書、預金口座振替申出書)が必要です。加入手続きに必要な契約申込書は、中小機構に資料請求します。(小規模企業共済未加入の方向け資料請求フォーム

契約申込書の他に、それぞれ申し込む方の立場で必要な書類を用意します。

書類が用意できたら、中小機構の業務委託団体または金融機関の窓口で加入手続をします。

申込日から約40日後に中小機構から「小規模企業共済手帳」と「小規模企業共済制度加入者のしおり」が届いたら手続完了です。

万が一、加入できない場合には、申込日から約2ヵ月後に中小機構から書類が送られてきます。

必要書類

加入する方の立場によって必要書類が異なりますので、ご自身に必要な書類を用意しましょう。

加入する方の立場 必要書類
個人事業主 確定申告の控え(開業届の控え)
法人(株式会社)の役員 履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本)など

 

共同経営者

  • 個人事業主の確定申告の控え(開業届の控え)
  • 共同経営契約書の写し
  • 社会保険の標準報酬月額通知、青色申告決算書、白色申告決算書及び賃金台帳、国民健康保険税・介護保険料簡易申告書のどれか

共同経営者の場合の共同経営契約書については、指定の様式はありません。中小機構ホームページに作成例があるので参考にしましょう。(中小機構:共同経営契約書作成例

小規模企業共済で受け取れる共済金額

小規模企業共済の加入を考えている方は、加入した場合に受け取れる共済金がどれくらいなのかが気になると思います。

小規模企業共済制度のパンフレットに、共済金額が載っていました。掛金月額が10,000円の場合の共済金額は以下の通りです。

掛金納付年数 掛金合計 共済金A 共済金B
5年 600,000円 621,400円 614,600円
10年 1,200,000円 1,290,600円 1,260,800円
15年 1,800,000円 2,011,000円 1,940,400円
20年 2,400,000円 2,786,400円 2,658,800円
30年 3,600,000円 4,348,000円 4,211,800円

※引用元:中小機構「小規模企業共済パンフレット」を元に作成

表を見ていただくとわかるように、掛金の合計金額よりも、受け取れる共済金が多くなっています。毎月積立した金額に上乗せした退職金がもらえるようなイメージですね。

掛金月額を30,000円にした場合には、表の共済金額の3倍を受け取れることになります。

共済金にはAとBがあります。

  • 【共済金A】個人事業の廃止、個人事業主の死亡、会社の解散など
  • 【共済金B】老齢給付、会社役員の疾病・負傷・65歳以上での退任、会社役員の死亡

小規模企業共済制度は、退職金として積立した金額よりも多い共済金を受け取れますし、毎年の節税効果もあります。

小規模企業の経営者や役員、個人事業主の方は、退職金の備えとして、また節税対策として制度の利用を考えると良いと思います。

経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、「中小企業倒産防止共済制度」のことで、取引先が万が一倒産してしまった場合に、売掛金等が回収できなくて経営難とならないように貸付が受けられる制度です。

経営セーフティ共済も小規模企業共済と同じように、中小機構が運営しています。中小機構は国が全額出資している独立行政法人ですので、つまり経営セーフティ共済は国が作った安心できる制度です。

ポイント
  • 中小企業の取引先が倒産した時に借入できる制度
  • 無担保・無保証人・無利子
  • 掛金の10倍(最高8,000万円)まで借入可能
  • 掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇メリット

経営セーフティ共済は、令和3年3月末時点で約54万の企業、事業者が加入しています。

取引先が突然倒産してしまった時に借入できる制度ですが、倒産の状況によって借入できない場合もあります。

共済金の借入が受け取れる取引先の倒産

  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能

共済金の借入が受けられない取引先の倒産

  • 夜逃げ

※引用元:中小機構「経営セーフティ共済制度の概要」

取引先の夜逃げによる倒産の場合には共済金が受け取れません。また、倒産日から6ヵ月を経過した場合も共済金は受け取れません。

経営セーフティ共済のメリット

経営セーフティ共済には4つのメリットがあります。

メリット
  1. 無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入可能
  2. 取引先が倒産後すぐに借入可能
  3. 掛金を必要経費に算入できて税制優遇
  4. 解約した場合に解約手当金が受け取れる

それぞれのメリットを細かく見ていきましょう。

無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入可能

  • 無担保・無保証人・無利子で借入できる
  • 掛金の10倍(最高8,000万円)まで借入可能
  • 無利子で借入できる

経営セーフティ共済は、加入後6ヵ月以上経過し、取引先の倒産によって売掛金等が回収困難になった場合に、無担保・保証人不要で借入できます。

借入できる金額は最高8,000万円までですが、上限金額は「回収困難となった売掛金債権の額」か「掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のどちらか少ない方となります。

経営セーフティ共済の借入は無利子です。(借入後は、共済金の借入額の10分の1の額が掛金から控除されます。)

取引先が倒産後すぐに借入可能

  • 取引先が倒産し売掛金等の回収が困難になった時にはスピーディーに融資

取引先が倒産した際には、連鎖倒産や経営難を防ぐためにスピーディーな貸付を行います。

銀行等の金融機関では、取引先が倒産した場合は連鎖倒産のリスクがあるためなかなか融資してくれませんが、経営セーフティ共済では、取引先が倒産した際に借入できる制度となっています。

掛金を必要経費に算入できて税制優遇

  • 掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選択(積立限度額800万円)
  • 掛金を損金(法人)、必要経費(個人事業主)に算入できて節税効果

経営セーフティ共済の掛金は、月額5,000円から20万円で、5,000円単位で選択できます。(掛金は800万円まで積立できます。)

掛金は、法人の場合「損金」、個人事業主の場合「事業所得の必要経費」扱いとして算入できます。決算期に1年分を前納した場合にも、損金または必要経費となるので、決算対策になります。

解約した場合に解約手当金が受け取れる

  • 解約すると解約手当金を受け取れる
  • 掛金40ヵ月以上の納付は掛金全額支給
  • 掛金12ヵ月以上は掛金総額の8割以上支給

経営セーフティ共済は12ヵ月以上掛金を支払うと解約時に「解約手当金」を受け取ることができます。解約手当金の支給率は以下の通りです。

掛金納付月額 任意解約
1~11ヵ月 0%
12~23ヵ月 80%
24~29ヵ月 85%
30~35ヵ月 90%
36~39ヵ月 95%
40ヵ月以上 100%

12ヵ月未満の納付の場合には、掛け捨てとなり解約手当金を受け取れません。40ヵ月以上の納付では100%の解約手当金を受け取れますが、12~39ヵ月の納付では上記の通り80~95%の支給率となります。

解約時には積み立てた金額が戻ってきますが、納付期間によっては全額戻りません。40ヵ月以上納付してからの解約をおすすめします。

経営セーフティ共済のデメリット

経営セーフティ共済は取引先の倒産時に貸付が受けられる、掛金は税制優遇メリットがあると説明しましたが、小規模企業共済のような高い節税効果はありません。

共済の種類 加入者、加入企業(令和3年3月)
小規模企業共済 153万人
経営セーフティ共済 54万

小規模企業共済に比べると、経営セーフティ共済は加入企業が少ないことがわかります。

デメリット
  • 貸付を受けると掛金の10分の1が消滅
  • 解約金の受取は課税対象

メリットがあるようで実はデメリットがある経営セーフティ共済は、制度を理解して加入しない企業もたくさんあります。

貸付を受けると掛金の10分の1が消滅

共済金の借入は無利子です。ただし、借入後は、共済金の借入後の10分の1に相当する額が払い込んだ掛金から控除されます。

※引用元:中小機構「共済金について」

簡単に説明すると、無利子と言っておきながら貸付時に減額されているので、利息を取られているのと同じことになります。「掛金の権利が消滅」するんだそうです。

例えば2,000万円借入した場合は10%の200万円が消滅し、8,000万円の貸付を受けた場合には800万円が消滅します。

掛金総額の10倍まで無利息で借入できるとしながら、実際には積立金から10%の利息を支払っていることになるので注意が必要です。

解約金の受取は課税対象

共済金の掛金は損金または必要経費として算入できますが、解約時の解約手当金は「収入扱い」「益金扱い」となり課税対象になります。

掛金
掛金は、税法上損金(法人)または必要経費(個人事業)に算入できます。

解約手当金
税法上、解約した時点での益金の額(法人の場合)、または事業所得の収入金額(個人の場合)に算入することになります。

掛金を積み立てている時には節税になっても、解約時には納税額が上がるので、結果的に納税の後回し(課税の繰り延べ)となり、実際には節税になっていません。

税制優遇メリットがあるとしていますが、トータルで考えると節税効果はありません。

節税対策に加入したはずなのに、解約のタイミングを間違えると税率が上がることもあるので注意が必要です。

解約するタイミングは、退職金や修繕など大きな支出がある時や、赤字になりそうな時を狙って、税率が低い時に所得と相殺する方法をおすすめします。

経営セーフティ共済の加入資格

経営セーフティ共済の加入資格があるのは、「1年以上事業を行っている中小企業者で会社または個人の事業者、組合」で以下の加入要件に該当する方です。

会社・個人の事業者

業種 資本金または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

ゴム製品製造業は、自動車または航空機用タイヤやチューブ製造業、工業用ベルト製造業は対象外となっています。

組合

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

組合でも、医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人等は加入できません。

加入窓口

経営セーフティ共済の加入窓口は、中小機構と業務委託契約している機関で会員となっている団体、または融資取引のある金融機関です。

融資取引のある金融機関がない場合には、預金取引を1年以上している金融機関の本支店で手続きできます。

委託団体

  • 商工会
  • 商工会議所
  • 中小企業団体中央会
  • 中小企業の組合
  • 損害保険ジャパン株式会社

金融機関の本支店

  • 都市銀行
  • 信託銀行
  • 地方銀行
  • 第二地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 商工組合中央金庫

商工会や商工会議所を普段利用している方はそちらで手続きできますし、最寄りの銀行や信用金庫等でも手続きできます。

加入窓口になっている金融機関は、中小機構のホームページに載っています。毎月1回更新されますので、よくご確認ください。

加入手続の流れ

経営セーフティ共済の加入手続きの流れをご説明します。

1.中小機構に資料請求
中小機構に資料請求して契約申込書等を取り寄せる

2.必要経費を用意
必要書類を入手すて記入する

3.窓口に提出
業務委託団体または金融機関の窓口に提出する

4.中小機構から書類が届く
「共済契約締結書」と「加入者必携」が届く

経営セーフティ共済に加入する場合には、まず中小機構に必要書類の資料請求をします。「契約申込書」「掛金預金口座振替申出書」「重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書」を受け取ったら必要事項を記入します。

共済に加入した後の手続は、全て業務委託団体または金融機関です。

窓口へ提出した約2ヵ月後に、中小機構から「共済契約締結書」と「加入者必携」が届きます。なお「共済契約締結書」については、共済金の貸付を受けるときや途中で解約するときに必要となります。

必要書類

必要な書類は、事業形態が法人企業か個人事業主かで異なります。

加入者 必要書類

法人企業(会社、組合)

  • 商業登記簿謄本または登記事項証明書
  • 法人税の確定申告書
  • 法人税納付の納税証明書

個人事業主

  • 所得税の確定申告書
  • 所得税納付の納税証明書
  • 帳簿等(白色申告書の場合)

業務委託団体または金融機関で、上記の書類の提示が必要となっています。

資金繰りが大変な時に考える貸付

経営セーフティ共済の他にも、取引先倒産時や資金繰りが大変な時に利用できる貸付があります。

金融機関 貸付の名称
日本政策金融公庫 取引企業倒産対応資金
(セーフティネット貸付)
中小企業庁
金融機関・信用保証協会
セーフティネット保証制度
(経営安定関連保証)

上記2つの貸付は、経営セーフティ共済のように掛金を積み立てるものではなく、取引先の倒産や資金繰りに支障が生じた時などに利用できる貸付となっています。

経営セーフティ共済に加入する予定のない方は、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付や、中小企業庁のセーフティネット保証制度の利用を考えると良いと思います。

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)は、日本政策金融公庫が行っている貸付です。

日本政策金融公庫は、通称「日本金融公庫」「日本公庫」「公庫」「国金」と呼ばれ、国が株式の100%を常時保有する特別な株式会社で、いわば政府系金融機関と言えます。

政府系の金融機関とあって、民間の金融機関よりも低金利で貸付を受けることができ、銀行等から借入できないような方への融資も積極的に行っていることが特徴です。

  • 日本政策金融公庫の取引企業倒産対応資金
  • 取引企業の倒産で経営に困難な方へ貸付
  • 融資限度額3,000万円(国民生活事業)、1億5千万円(中小企業事業)

取引企業倒産対応貸付は、日本金融公庫の「国民生活事業」と「中小企業事業」で取り扱っています。

日本政策金融公庫 融資限度額 返済期間
国民生活事業 別枠3,000万円 8年以内
(うち据置期間3年以内)
中小企業事業 別枠1億5千万円 8年以内
(うち据置期間3年以内)

国民生活事業では最高3,000万円まで、中小企業事業では最高1億5千万円までの融資を可能としています。

返済期間は8年以内でうち据置期間が3年以内となっていますから、経営セーフティ共済の返済期間(5,000万円未満、返済期間5年うち据置期間6ヵ月)に比べると利用しやすいと思います。

セーフティネット貸付の詳細は、日本政策金融公庫のホームページをご覧ください。

セーフティネット保証制度

中小企業庁のセーフティネット保証制度は、取引先の大型倒産や災害、取引金融機関の破綻等によって、経営の安定に支障を生じている中小企業を支援するための制度です。

  • 中小企業庁のセーフティネット保証制度
  • 事業所所在の市町村で認定を受ける
  • 認定後、金融機関・信用保証協会で保証付き融資を申し込む

こちらの制度を利用するためには、事業所所の所在地がある市町村の認定を受ける必要があります。認定を受けた後に、認定書を持参して、金融機関や信用保証協会で保証付き融資の申込をします。

セーフティネット保証制度の対象者は、以下のいずれかに該当する事業者で、市町村長または特別区長の認定を受けた方です。

セーフティネット保証制度 対象者
1号:連鎖倒産防止 大型倒産(再生手続開始申立等)の発生により影響を受けている中小企業者
2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限 取引企業のリストら等の事業活動の制限により影響を受けている中小企業者
3号:突発的災害(事故等) 突発的災害(事故等)により影響を受けている特定地域の特定業種を営む中小企業者
4号:突発的災害(自然災害等) 突発的災害(自然災害等)により影響を受けている特定地域の中小企業者
5号:業績の悪化している業種(全国的) 全国的に業況が悪化している業種に属する中小企業者
6号:取引金融機関の破綻 金融機関の破綻により資金繰りが悪化している中小企業者
7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整 金融機関の相当程度の経営の合理化(支店の削減等)に伴い借入が減少している中小企業者
8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡 整理回収機構に貸付債権が譲渡された中小企業者のうち再生可能性があると判断される者

※引用元:全国信用保証協会連合会ホームページの表を元に作成

新型コロナの影響を受けた方は、4号または5号の対象となります。

セーフティネット保証制度の保証限度額は、普通保証で2億円、無担保保証で8,000万円までとなっています。

申込窓口は、市町村の商工担当課等です。認定を受けたら金融機関または信用保証協会に認定書を持参して、保証付き融資に申込しましょう。

小規模企業や個人事業主の方は、万が一の備えとして「小規模企業共済」や「経営セーフティ共済」への加入を考えると思いますが、加入する前に、制度をよく理解することが大切です。