自動車税の未払いですぐに車を持っていかれることはありませんが、最終的には車や財産を差し押さえられる可能性があります。
いつまで滞納しても平気なのかは地域によっても変わりますが、8月までなら大丈夫と言われています。
ただし、法律上は納期限から1ヶ月ほどで差し押さえが可能になります。
自動車税は地方税なので、管轄は都道府県です。自治体の税金滞納の取立ては意外と厳しいと言われていますが、自動車税も例外ではなく、滞納が続けば財産が差し押さえられます。
自動車税を滞納できる期間と延滞金
自動車税はいつまで滞納しても平気なのか気になっている人も多いと思いますが、延滞金の支払いが発生するという意味での期限は、延滞金が1,000円に達した時です。
延滞金は、1,000円未満は切り捨てなので、実際には延滞金が1,000円に達するまでは延滞金がかからず、少しの滞納期間では延滞金の支払いは発生しません。
自動車税の金額によってもいつまで大丈夫なのかが変わってきます。自動車税と延滞期間によっていくらの延滞金がかかるのかをEXCELで計算してみました。
自動車税 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | 11ヶ月 | 12ヶ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
10,800 | 21 | 91 | 163 | 234 | 306 | 377 | 449 | 520 | 592 | 663 | 735 | 806 |
25,000 | 49 | 228 | 407 | 586 | 764 | 943 | 1,122 | 1,301 | 1,479 | 1,658 | 1,837 | 2,016 |
30,500 | 59 | 274 | 488 | 703 | 917 | 1,132 | 1,346 | 1,561 | 1,775 | 1,990 | 2,204 | 2,419 |
36,000 | 71 | 328 | 586 | 843 | 1,101 | 1,358 | 1,616 | 1,873 | 2,130 | 2,388 | 2,645 | 2,903 |
43,500 | 85 | 357 | 664 | 972 | 1,279 | 1,587 | 1,894 | 2,202 | 2,509 | 2,817 | 3,124 | 3,432 |
50,000 | 99 | 456 | 814 | 1,171 | 1,529 | 1,886 | 2,244 | 2,601 | 2,959 | 3,316 | 3,674 | 4,032 |
57,000 | 112 | 520 | 928 | 1,335 | 1,743 | 2,150 | 2,558 | 2,966 | 3,373 | 3,781 | 4,188 | 4,596 |
65,500 | 128 | 593 | 1,058 | 1,523 | 1,987 | 2,452 | 2,917 | 3,382 | 3,847 | 4,311 | 4,776 | 5,241 |
75,500 | 148 | 684 | 1,221 | 1,757 | 2,293 | 2,829 | 3,366 | 3,902 | 4,438 | 4,975 | 5,511 | 6,047 |
87,000 | 172 | 794 | 1,416 | 2,038 | 2,660 | 3,282 | 3,904 | 4,526 | 5,148 | 5,771 | 6,393 | 7,015 |
110,000 | 217 | 1,004 | 1,790 | 2,577 | 3,363 | 4,150 | 4,936 | 5,723 | 6,510 | 7,296 | 8,083 | 8,869 |
※縦軸が自動車税の金額で、横軸が延滞した期間です。
たとえば税金が25,000円の場合、延滞金がかかるのは延滞期間7ヶ月からなので、12月以降になります。
延滞金の100円未満の端数は切り捨てられるので、2,244円の延滞金が発生しているときは、自動車税+2,200円の請求が来ることになります。
30,500円の場合は10月末まで、57,000円でも8月末まではかからないので、これが8月までに支払えばOKと言われる理由かもしれません。
延滞金の利率は令和6年の利率で計算しています。延滞から1ヶ月間が年2.4%、2ヶ月目以降が年8.7%です。
1ヶ月を30日で計算したので、実際の金額とは少しずれますが、おおよその目安になると思います。
計算式のミスの可能性もあるので、正確な金額が知りたい人は自分で計算してみてください。
延滞金の計算方法
3,000~3,500ccの車で自動車税が57,000円の場合
57,000円×0.024÷365×30=112円
納期限から1ヶ月間の延滞金は112円です。
57,000円×0.089÷365=13.9円/1日
納期限1ヶ月以降の延滞金は1日14円弱です。
納期限の4ヶ月目(9月)に1,000円を超えるので、納期限から3ヶ月間は大丈夫ということになります。
なお、延滞金の税率は毎年変更になる可能性があるので、税率が変わればもっと早くなったり遅くなることになります。
法律上は納期限から1ヶ月ほどで差し押さえが可能になります。税金はできるだけ早く支払いましょう。
1,000円未満の延滞金は切り捨てられる
自動車税に限らず、地方税においては、1,000円未満の延滞金は支払う必要がありません。
地方税法の第二十条の四の二で、地方税の延滞金の計算方法などについて書かれています。
地方税法 第二十条の四の二
地方税の課税標準額を計算する場合において、その額に千円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。ただし、政令で定める地方税については、この限りでない。
2 延滞金又は加算金の額を計算する場合において、その計算の基礎となる税額に千円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が二千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
5 延滞金又は加算金の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
法律の文章で見るとわかりにくいですが、簡単にまとめると以下のようになります。
- 計算の基礎となる税額の1,000円未満は切り捨て
- 計算の基礎となる税額が2,000円未満のときは全額切り捨て
- 算出された延滞金の100円未満は切り捨て
- 算出された延滞金の全額が1,000円未満のときは全額切り捨て
延滞金を請求するのにもコストがかかるので、1,000円未満の延滞金は請求しないというのは合理的な気がしますね。
自動車税を滞納した時の差し押さえの流れ
納付期限までに支払わなかった
納付期限までに支払わなかった
都道府県の県税事務所(税務署長)から通知が届く
勤務先が給与を支払う時点で天引きされる
預金口座から自動車税+延滞金が引かれる
車が差し押さえられる
自動車税を滞納し続けたときの一般的な流れはこのようになり、最終的に税務署長から財産の差し押さえ予告書が届きます。
差し押さえられる可能性がある財産とは、「給与、不動産、債権、電話加入権、自動車など」です。
カードローンなどのローンの返済が遅れた時の差し押さえは、裁判を経て行われますが、国や地方自治体の税金の滞納では、裁判を経ずに差し押さえることができます。
給与の差し押さえの場合、会社に通知が行くので会社の人にバレてしまいます。無職や預金がなくて差し押さえるものがない場合、車を持って行かれてしまう可能性があります。
9月や11月以降に差押えが行われる?
都道府県は実際に自動車税の滞納者の差し押さえを行っています。
県によって期間が異なりますが、9月または11月から集中差押期間と銘打って、滞納者の一斉差し押さえを行っています。
私が調べた感じでは9月より前に集中差押を行っている県はありませんでした。11月や12月は自動車税に限らず県税の差し押さえ強化期間になっている事が多いです。
自動車税は8月までに支払えば大丈夫という話は、延滞金と差し押さえの両方のことを指しているのかもしれません。
茨城県のホームページに自動車税の差し押さえに関するお知らせが載っていました。
令和5年11月から令和6年1月は滞納整理強化月間です
県では、自主財源の確保や納税された方との公平性の観点から、滞納者に対して、財産の差押や公売を実施するなど、毅然とした姿勢で滞納整理に取り組んでいます。
県税事務所では、令和5年11月から令和6年1月までを、県税の中で特に滞納件数が多い自動車税(種別割)を対象に「滞納整理強化月間」として、集中的に滞納整理を行い、自動車税(種別割)の徴収率向上及び滞納額の縮減に取り組みます。
給与差押え・売掛金差押えの実施
- 勤務先が判明した滞納者に対しては、勤務先に給与の支給状況を照会します。
- 取引先が判明した滞納者に対しては、取引先に取引状況を照会します。
支払状況を元に差押えを実施し、延滞金も含めた滞納税額が完納になるまで取立を行います。
タイヤロック(ミラーズロック)の実施
県税事務所職員が自宅等を訪問し、タイヤロック(ミラーズロック)を装着します。
当該自動車についてインターネット公売を実施し、延滞金も含めた滞納税額に充当します。
公売を実施した場合は、滞納税額以外に滞納処分費が発生し、その分の費用も滞納者の負担となります。
納付期限が5月末で集中差押期間が11月なので、だいぶ猶予はありますね。
静岡県のホームページにも自動車税滞納整理強化期間に関するお知らせが載っていました。
令和5年11月から令和6年2月は「自動車税種別割滞納整理強化期間」です。
自動車税種別割の納期は、毎年5月11日から5月31日です。(最終日が休日の場合は、休日の翌日になります。)
県では、自動車税種別割の納期限を過ぎて滞納している方に対して、これまで督促や催告を行ってきましたが、いまだ特別の事情もなく自動車税種別割を納めていない方がいます。
このような滞納者に対して、県は、税負担の公平性を確保するため、次のとおり期間を定めて、差押えなどの強制処分を含め、集中的に滞納整理を実施します。
- 滞納者の財産に関する徹底した調査を行います。
- 調査結果に基づき、支払能力がある者に対して順次財産の差押さえを行います。
- 差し押さえた財産の公売(売却)・取り立てを行います。
- 特別の事情がある方のために納税相談を行います。
静岡県では11月から翌年2月が、滞納整理強化期間となっています。
地域によって滞納整理強化月間の期間は異なりますが、納付期限である5月31日からある程度の期間を待って、それでも支払わない場合には、調査を行い給与や車などの資産が差し押さえられる可能性があるということです。
自動車税の納付期限と延滞金
5月に届く自動車税の納付書の納期限は、5月末になっています。(5月末が休日の場合は6月上旬まで)
納付期限内の通知書は、コンビニや銀行、自動車税事務所、各県税事務所での支払いが可能ですが、期限が切れた納付書は、ゆうちょ銀行を除く金融機関か自動車税事務所、各県税事務所での支払いとなり、コンビニ払いはできなくなります。
納付期限をすぎると延滞金が発生しますが、期限から1ヶ月以内の利率と1ヶ月を過ぎてからの利率が異なります。
延滞金の年率
6月以降は延滞金が発生する可能性があります。延滞金の年率は都道府県によって異なる可能性がありますが、一般的に以下のよう数字になります。
適用期間 | 納期限~1ヶ月 | 1ヶ月~ |
---|---|---|
令和4年~ | 2.4% | 8.7% |
令和3年 | 2.5% | 8.8% |
平成30年~令和2年 | 2.6% | 8.9% |
平成29年 | 2.7% | 9.0% |
平成27年~28年 | 2.8% | 9.1% |
平成26年 | 2.9% | 9.2% |
平成22年~25年 | 4.3% | 14.6% |
平成21年 | 4.5% | 14.6% |
平成20年 | 4.7% | 14.6% |
平成19年 | 4.4% | 14.6% |
平成14年~18年 | 4.1% | 14.6% |
平成12年~13年 | 4.5% | 14.6% |
納期限から1ヶ月間は延滞金の利率も低いですが、1ヶ月をすぎると高くなります。
自動車税の納付金額が25,000円で、2ヶ月間滞納すると以下の延滞金が加算されます。
25,000×0.024÷365×30=49円
25,000×0.087÷365×30=178円
2ヶ月延滞して228円の延滞金なので、思ったより安いと感じた人が多いかもしれません。
延滞金は、1,000円未満は切り捨てになるので、999円までは延滞金はかかりません。また、1,000円以上は100円未満が切り捨てになります。
自動車税の金額
自動車税は排気量によって金額が異なり、1,000cc以下は25,000円、2,000~2,500ccで43,500円ほどの金額になります。
新車登録時期が2019年9月30日以前か、2019年10月1日以降かによって自動車税の金額が変わります。
排気量 | 2019年10月1日以降 | 2019年9月30日以前 |
---|---|---|
軽自動車 | 10,800円 | 10,800円 |
電気自動車 | 25,000円 | 29,500円 |
1,000cc以下 | 25,000円 | 29,500円 |
1,000~1,500cc | 30,500円 | 34,500円 |
1,500~2,000cc | 36,000円 | 39,500円 |
2,000~2,500cc | 43,500円 | 45,000円 |
2,500~3,000cc | 50,000円 | 51,000円 |
3,000~3,500cc | 57,000円 | 58,000円 |
3,500~4,000cc | 65,500円 | 66,500円 |
4,000~4,500cc | 75,500円 | 76,500円 |
4,500~6,000cc | 87,000円 | 88,000円 |
6,000cc以上 | 110,000円 | 111,000円 |
軽自動車くらいの金額ならすぐに用意できると思いますが、排気量が2.5リットルを超えると5万円以上の金額になります。
自動車税を支払うために借金する人も珍しくありませんが、年一回なので毎月少しずつ貯めておきたいですね。
預金や給与の差し押さえ
車や他の財産を差し押さえるのは大変なので、通常は預貯金口座に対し債権差押えが行われます。
口座残高が納付額に満たない場合は、足りない分の督促状が届く場合があります。
預金や貯金は全額が差し押さえの対象になりますが、給与は全額ではなく一部が差し押さえられます。
ローンや借金の滞納で強制執行される場合、手取り給与の4分の1までが差し押さえの対象ですが、税金滞納の場合はこの限りではありません。
税金を滞納したときの給与の差し押さえ金額は、額面給与から差押え禁止額を引いた金額が対象になります。
- 所得税、住民税
- 社会保険料
- 10万円
- 同一生計の配偶者や子ども1人につき4.5万円
- 額面給与から上記を差し引いた金額×20%
子どもの人数に応じて差押え禁止額が増えるため、単身者と子どもがいる既婚者では、差し押さえられる金額が大きく変わります。
単身者の例
給与40万円、所得税1.1万円、住民税2.5万円、社会保険料6万円
40-1.1-2.5-6-10-(20.4万×0.2)=16.32万円
配偶者あり・子ども2人の例
給与40万円、所得税1.1万円、住民税2.5万円、社会保険料6万円
40-1.1-2.5-6-10-13.5-(6.9万×0.2)=5.52万円
単身者で配偶者や子どもがいない場合、額面40万円で最大16万円も差し押さえられることになります。
手取りの4分の1よりも大きな金額になることもあり、生活が厳しくなる可能性があります。
収入にもよりますが、配偶者や子どもがいる場合、差し押さえられる金額は小さくなります。
税金滞納時の強制執行は、差し押さえに裁判が必要ないことや、差し押さえられる金額が世帯によって変わるのが特徴です。
差し押さえは簡単にできる
税金の差し押さえは裁判を経る必要がないので、思った以上に早く行われることがあります。
市区町村は住民税の特別徴収により、住民の勤務先情報を把握しています。
公共料金(電話、電気、ガス、水道など)の支払いをしていれば、照会することで口座情報を知ることもできます。
裁判によって差し押さえを行う場合でも、2020年4月施行の民事執行法改正により、預金や給与の差し押さえが簡単にできるようになりました。
預金口座情報や勤務先情報は、裁判所経由で取得できるようになっています。
差押対象 | 必要な情報 | 照会方法 |
---|---|---|
預金の差し押さえ | 銀行名と支店名 | 裁判所から銀行本店に照会 |
給与の差し押さえ | 勤務先 | 裁判所から市区町村に照会 |